経済

「バブル崩壊」とか「経済恐慌」と云えば10年昔から同じことが言われているけど、不景気ではあるがそんな激しい変化が起こったためしがない。「このような悲観論は正にオオカミ少年ではないか?」。

この批判は当たっているのだろうか。誤解を避けるため「経済恐慌」は「金融恐慌」という言葉に置き換えたい。
「バブル崩壊」とか「金融恐慌」はたしかに起きてはいない。だからと云って、歴史的変化はこれとは無縁なんだろうか。

2008年9月のリーマンショック以来、世界の金融政策をみると、ドルの基軸通貨としての地位を守るためアメリカの中央銀行がQE(金融緩和をして通貨発行額を拡大した)を実行し、それに協力する日欧が肩代わりする意味でQEを拡大した。ついには日欧の中銀がマイナス金利の金融政策まで実行するに至った。

一息ついた米中銀(FRB)は利上げをして金融破綻の延命を図った。しかしながら日欧がQEの限界を迎え、長短金利がイールドカーブの逆転をみるに及び、米中銀も金融緩和の再起動を余儀なくされた。

金融恐慌は日米欧の中銀の度重なる緩和政策により延命に延命を続け今日に至っている。これは単なる延命でなく、金融破綻のエネルギーを蓄積した時間稼ぎに過ぎない。

ところで「オオカミ少年」と非難する勢力の意図はどこのあるのだろうか。次の発言に注目しなければならない。「10年間も景気停滞に見舞われ、しかも金融緩和を続けながら経済恐慌も起こらない現状を見れば、もっとお金を増発して財政出動を思い切ってやるべきだ」「円で国債が回っている限り、国債の増発で国が潰れるはずはない」「インフレ率2~3%までは景気刺激策をすすめるべきだ」

以上をもってあえてMMTとは言わない。MMTには金融論(経済理論)と財政政策が混在しているからだ。「オオカミ少年批判」や「お金増発・財政出動」などは政策論であって経済理論とは切り離す必要がある。なぜなら彼らは都合の良いときは経済理論としてのMMTを振りかざし、一方において別の都合では政策論を主張するからだ。MMTの落とし穴にはまらないよう細心の注意を払ってこの文を書いている。
https://nc5.info/2019/07/03/post-572 (MMTについての過去記事)

ところで前置きはさて置き、本論に移らねばならない。

日本経済新聞 電子版 19年8月15日

15日午前の東京株式市場で日経平均株価は一時2万0200円を下回り、前日からの下げ幅は500円に迫る勢いだ。
米国では14日に10年物国債の利回りが2年債を下回る長短金利の逆転が発生。近い将来の米景気後退が意識され、米ダウ工業株30種平均が800ドル安と今年最大の下げ幅を記録した。

米中貿易摩擦の長期化もあって世界景気の減速懸念が強まるなか、日本の株式相場はどう動くのか。中長期的な展望を市場関係者に…
(16日には米日とも若干戻してはいるがトレンドは変わらない)

日刊ゲンダイDigital 19年8月6日(金融ジャーナリストの小林佳樹氏)

「年内に1ドル=100円を切り、株価1万8000円割れが見えてきました。米国は年内に1~2回の追加利下げがありそうで、各国の利下げ合戦が激化します。ただ、マイナス金利まで下げている日銀には利下げの余地は乏しい。為替条項などトランプ大統領の円高圧力が強まる中、露骨な為替介入に見える米国債の大量購入もやりにくい。せいぜいできることは、日銀がETFの年間買い入れ額を6兆円から増額し、株価を多少下支えすることでしょうが、円高・株安の大きな流れは止められない」

東洋経済オンライン 19年8月17日

日本でも実態悪が進んでいる。日本の経済・企業収益の実態も、悪化の一途をたどっている。消費者心理を示す消費者態度指数は、7月分まで急速な悪化傾向にあり、そのまま消費増税に突入する。鉱工業統計の在庫指数は輸出減もあって増加を続け、6月分の生産は大きく反落して2017年1月来の低水準となった。

企業決算については、日本経済新聞の集計によると、集計対象企業の45.7%が8月2日(金)までに発表を終えたが、4~6月期の実績値は経常利益が12.4%減益、純利益が9.6%減益とのことだ。2019年度通年でも企業側は減益を見込んでいる。アナリストの見通し平均値でも、やはりむこう12カ月のEPS前年比は減益予想のまま、下方修正が止まらない(東証1部についてのファクトセット集計値)。
こうした実態悪を踏まえると、9月までに日経平均が1万6000円に向かう、という見通しは、維持すべきだと考える。

以上は日本の経済危機が迫ってきている根拠だが、世界の金融恐慌についても気になる情報が入ってきた。

ブレトンウッズ会議75周年、フランスのルメール財務相の発言

7月17日、米国ワシントンDCの世界銀行で開かれた「ブレトンウッズ会議75周年」の会合に参加したフランスのルメール財務相が「ブレトンウッズ体制は、もう限界にきている。体制を改革して国際金融秩序を立て直さないと、この体制は正統性を失って消えていき、代わりに(中国が主導する)一帯一路・新シルクロードが新たな世界体制になってしまう」と表明した。

今週末からフランスで開かれるG7サミット(主要7カ国首脳会議)で史上初めて「首脳宣言」が作成されない見通しであることが分かりました。議長国であるフランスのマクロン大統領が開催に際しこのような見通しを表明したためです。1975年にサミットが始まって以来、初めて首脳宣言が出されない見通しです。

主な原因は米英の意見と仏独の意見が対立しているためです。イタリアが出席しない可能性もあったので、トランプ大統領はロシアをG7に戻らせるべきだ主張しています。以前から危ぶまれていたG7無力化がいよいよ目先に迫ってきた感があります。G20重視の傾向が強まりこれが世界の金融経済の大変革をもたらす可能性が高くなってきました。

世界恐慌まではまだ時間がありそうだが、今回の金融恐慌は日本初となる可能性が高い。理由は日本が一番QEの出口戦略が遅れていること、並びに日本が最も輸出環境が悪くなっていること、産業の構造改革が遅れていることなどです。「オオカミ少年」の烙印は汚名ではなくなりつつあります。https://nc5.info/2019/07/10/post-579/(金融恐慌についての過去記事)

 

社会

「安倍政権は前回、14年4月に5%から8%に消費税を引き上げた際、景気が悪化したことがトラウマになっています。その轍を踏まないようにと、今回持ち出したのが中小店舗でキャッシュレス、つまり現金を用いない支払いをすれば、金額5%相当分のポイントが戻ってくるというもの。8%から10%への増税どころか、減税とさえ言えるような政策まで出してきたのです」(大和証券企業調査部日本株シニアストラテジストの高橋卓也氏)

なんと3000億円の大盤振る舞いだ。そこまでするなら、そもそも消費税を上げなければいいと思えるが—。
ただし、これは期限付きで消費前増税の2019年10月1日より2020年6月30日までの9ヶ月間。東京五輪までにキャッシュレスを定着させたいという思惑があるのだろう。しかし、オリンピックが終わったら急速に景気が悪くなるという観測が投資コンサルタントや経済評論家の多くから聞こえてくる。

キャッシュレスについてはわかっているようでわからない面があるので、QRコードとか各種キャッシュカードの知識が乏しく、これから消費税増税に伴って行なわれるポイント還元を目前に控えどのように対処したら良いのかを私自身の勉強を兼ねて書き残しておいた。

先ず、基本中の基本から

今回ポイント還元の対象になるキャッシュレス手段から
1.クレジットカード
VISAカード・Masterカード・JCBカードなど。カード使用から決済までタイムラグがあり引き落としは銀行等。店側は手数料がかかる。
カード取得には審査がある。利用者は安全確保のためパスワードや署名などが求められる。毎月の利用実績は郵送も可能だが年会費が必要となる。
2.キャッシュカード
プリペイドカードはチャージが必要でチャージした金額を限度として利用できる。原則として審査はない。
デビットカードは銀行口座やクレジットカードなどと紐付けられ、残高が一定以下になると自動的にチャージされる。当然のことながら紐付けられた元の残高が利用限度となる。 この2種のカードはほとんどの場合パスワード等の入力の手間はかからない。将来は非接触のICカードとなり益々利便性が増す。ただし店側の読み取り機の有無が問題となる。
3.QRコード、スマホ決済
Line Pay・PayPay・Origami Pay・楽天Payなど。スマホにそれぞれのアプリをインストールし利用の都度アプリを使ってQRコードを表示する必要がある。店側はスイッチングゲートウエイ等を利用すればそれぞれに対応する煩雑さは免れることができるが、消費者にとっては複数のアプリを操作することとなり、更に毎月の利用実績管理が難関となり、利便性は最悪。しかもコードを写しとるステップがあるため不正利用のリスクもある。

経産省の実施要項はやっと固まって現在関連業者の登録を受け付けている段階なので、詳細は下記のアドレスで確認していただきたい。
https://cashless.go.jp/assets/doc/kameiten_leaf.pdf
https://cashless.go.jp/

以上の基礎知識に基づき、当面の消費税対策とキャッシュレスの未来に向けての対策について解説する

消費税対策としては政府の対応が遅れており最近やっとまとまった段階でまだ不明の点が残されている(対象業者の審査の基準など)。従ってこの段階での消費者の対応はなるべく簡素で最低必要な範囲に留め、未来を展望した対策に重点を置いたほうがベターだ。

消費税対策のポイント還元については行政のやり方に根本的矛盾がある。それは売り手側の対象を小規模業者の場合「資本金または出資の総額が5000万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主」に絞っておきながら消費者側にはスマホ決済で一番手間のかかり将来性のないQRコード決済に誘導する。しかもクレジットカードやプリペイドカードなどの読み取り機をすでに備えている比較的中規模以上の業者を対象から外してしまったことだ。(中国のようにQRコードが統一化された状況と、乱立してしまった日本の現状ではその利便性は大きく異なってくる。従ってQRコード自体が悪いわけではないことはことわっておく)

消費者としてはスーパーマーケットや電気量販店など、購入金額が大きいか利用頻度が高い購入を対象としてもらいたいはずだが(それでなければ9ヶ月の購入額の5%が数万円程度にしかならない。消費税値上げの影響からするとごく僅かでしかない)、行政の対応は小規模小売を主たる対象に限定したため5%ポイントが絵に描いた餅となってしまっている。小規模業者を応援することは良いことには違いないが、それなら別の財源でやってもらいたい。しかも将来性のある「コンタクトレス決済」への道を閉ざしてしまった形となっている。

英国では非接触決済の一秒もかからないスピードと利便性に慣れた消費者は多くの生活の場面で非接触のプリペイドカードや非接触のデビットカードを使うようになり、急速にキャッシュレスが進んだ。

議論が不十分な日本の決済改革

英国、米国、オーストラリア、カナダなど諸外国の決済改革は、政策当局の明確なイニシャティブの下で、銀行・フィンテック・ユーザー(消費者・企業)を広く巻き込んだ議論を踏まえ、また新決済インフラを運営する新たなガバナンス主体を設置する形で展開されている。
くらべて、日本は政策としてキャッシュレスを掲げつつも、そのために不可欠であるはずの決済改革については充分に議論が進んでいるとは思われない。結果として、キャッシュレス手段は続々と登場するものの、本来の目的である、生産性の向上や顧客体験の向上には寄与しにくい状況が生まれている。

結果として3000億円は大判振る舞いどころか、真逆の「都合の良い宣伝文句」でしかなかったのかと思ってしまう。以上、消費税増税のポイント還元の実態をみると、政治がどちらを向いて仕事をしているのか益々疑問が深まってしまった。