未来

これは、経済同友会の著書の題名です。小林喜光代表幹事監修となっております。
最初に断っておきますが、経営者団体なので当然そのポジショントークが気がかりとなる部分もあります。例えば「今だけカネだけ自分だけ」のフレーズで「カネだけ」は省略されて「今さえ良ければ、自分さえ良ければ」と云う表現になっています。思わず吹き出してしまいました。
財政破綻の手当が一刻の猶予もならないと云う危機意識は良いが、そのためには消費税をヨーロッパ並みの20%以上に引き上げるべきだと云う主張には無条件で賛同することはできません。

以上のマイナス面にも拘らず、数多くの有益な分析や対策が含まれていることに注目しなければなりません。目次とは別に危機感の根拠(現状分析)、経済同友会が策定した「日本が目指すべき社会像についての提言Japan2.0 最適化社会の設計ーモノからコト、そしてココロへー」について以下ご紹介します。

「日本は今岐路に立っている」がサブタイトルだが、いやかってほとんど経験したことのないレベルの危機に直面していると言ったほうが正確だろう。これは敗戦により焦土と化した70余年前に匹敵する困難であり、更には「ひたすら経済成長を目指す」と云う目標が描けた往事とは、質の異なるクライシスである。

残念ながら、そうした危機が、政治家や官僚、経済人、そして国民に広く共有されていない。そのことこそが危機の本質なのだ。

第一に、日本の財政はすでに1000兆円を超える公的債務を積み上げてしまい、破綻の危機にある。一方毎年の予算規模はおよそ100兆円で歳入はその6割、残りの4割が国の借金だ。収入の10倍の借金を抱え、さらにそれを積み増しているのが、今の日本と云う国だ。家庭ならとっくに破産、企業なら倒産していてもおかしくない。

第二に、急速に進行する少子化、高齢化の問題がある。この人口構造の激変が財政赤字の一因となっているばかりでなく、労働力の減少により経済成長の鈍化を招いている。

第三に、格差や貧困の拡大、民族や宗教の対立、水や食料の不足、資源・エネルギーの枯渇、そして地球規模での気候変動と云ったグローバルアジェンダの存在である。言うまでもなく、どれもこれも対岸の火事で済まされるテーマではない。

この他、産業の衰退も著しく、平成元年、ジャパンアズナンバーワンと呼ばれたあの時代、世界の株式時価総額比較で日本の企業は上位5社を独占し10位までに7社がランクインされていた。その後2019年に至っては1社も入っていないどころか日本のトップ企業であるトヨタでさえ35位に低落している惨憺たる状況だ。

これは新分野の半導体、液晶ディスプレイ、バイオなどが国際競争に取り残され、拡大していくデータ・セントリック科学分野でもGAFA(グーグル・アップル・フェースブック・アマソン)に巨大市場を独占され、オンラインマーケットを展開するアリババやJD.comのような中国企業にさえ負けている状況から生じている。

次世代の通信技術5Gではすでに中国のファーウエーが世界のトップに躍り出ている。

世界の潮流はグローバル化、デジタル化、ソーシャル化、この三っつのうねりが社会の仕組みをドラスティックに変えつつある。「日本の危機」は直視すればするほど、それは複雑で根が深く、もはや対症療法で改善が見込める段階でないことが分かる。
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本書は全体を通してあらゆる角度から危機感を語っているのですが、処方箋も明確に示しているのが特徴です。それは「Japan2.0」と称して多角的に提言がなされています。考え方の基本は、失われた持続性と多様性の回復です。

「Japan2.0」は起点を2021年として「持続可能な社会」の実現にめどをつけるのが2045年としています。

現代の国家価値の評価は三次元で捉えれば理解しやすい。これが我々経済同友会の結論である。そのモデルはX軸=経済の豊かさの実現、Y軸=イノベーションによる未来の開拓、Z軸=社会の持続可能性の確保ーーーと云う三つの軸を設定しそれぞれ具体策を提言しています。

具体策についてはかなりのボリュームなのでここでは省略します。最初に断ったこの提言のマイナス面に戻りますが、この提言が経営者目線であるにしても、次の問題提起には注目せざるをえません。

「低成長が長引くことに伴う中間層の減少により、政党政治における中道派も勢いを失った。民衆とエリートとの間には、超えがたい壁が生じることになった。社会の二極化に対し、折り合いをつけながら現実的で効果のある解決策を見出し、断絶を修復していく役割を、政府や議会は果たせなくなっている」。

この問題提起は非常に重要で経済アナリストの藤原直哉氏も同じような問題意識をもっておられる。
日本の社会は戦後のイデオロギー対立から、ネトウヨと呼ばれるような変則的右翼とこれに噛み付くリベラル左派との空中戦ばかりが目立ち、野党は安倍政権の終わりなき嘘と誤魔化しに対しもぐら叩きに始終する事態が現れている。つまり、危機的原状に目を向けず、基本に戻り本質を突くような議論が殆どなされていない。

つまり中間が存在せず本質論が出にくくなっているのです。リベラル左派の激烈な批判はそれなりに効果があるものの、国民に訴える力を失い自分たちの仲間で固まって広がりを失っているのです。その原因は正しい危機意識に基づく正しい処方箋が描けていないことに起因しています。

ネトウヨが受け入れられないと同様にリベラル左派の喚きも国民に理解されないのは当然です。「消費税ゼロ」「カネを刷りまくって福祉に当てろ」など論外です。不真面目以外の何ものでもありません。

消費税については逆進性が強い面を指摘して、これ以上の値上げに反対するのは当然だとしても、現在の財政破綻の状況に危機感をもち、後世につけを回す不道徳を考えれば、経済同友会の20%論も現状認識としては無視する訳にはいかないでしょう。もちろんその前にやるべきことがあることを踏まえて別の対策を提言する義務があるのです。

経済同友会の「危機感なき茹でガエル日本」は警告の書として貴重な情報を与えてくれました。是非読まれることをお勧めします。

未来

レドックスフロー電池こそ、エネルギー問題の救世主だ・・・これは今の政権では解決できない!

■ 自然エネルギー転換、エネルギーの地産地消を阻むマイナス要因

1.2019年問題 2009年に始まった固定価格買い取り制度が期限切れとなる。この対象家庭は50万世帯、今後毎年20万世帯増え続け2027年には200万世帯になる。

「自己防衛として当面 EV(電気自動車)の購入を図るしか方法はない」とは困ったもの。(固定買取価格制度の今後と対策は別記)

2.人口減少による地方の送電線維持費の捻出問題に加えて分散型発電の増加と広域送電システムのアンマッチも問題となる

3.売電(電力の小売)業者の増加、2016年に電力の小売自由化、400社がひしめく。

以上まとめると、日本は発電・配電・売電のすべての領域で矛盾を抱えている。これに対して国や地方の行政の対応が立ち遅れている。北欧や米国では風力発電のコストがKWあたり6円ドイツの太陽エネルギーのコストは日本の3分の一以下になっている。近い将来KWあたり5円以下になる。大量生産による設備償却費の激減が要因、家電品と違って太陽光パネルは需要量の規模が比較にならない。このため量産効果がハンパでなく、ドイツ・北欧では太陽光パネルの価格が飛躍的に安くなっている。

■ 欧米はブロックチェーンやAI、IoTを積極的に応用する動きが進み、日本はこの動きから大幅に取り残されている。

世界の電力消費量は現在20兆KW時だが2030年には30兆KW時を超える。これを巡る市場規模は100兆円になる。

再エネ普及に向け新技術を用いた取り組み7社
ドイツ:NRGコイン アメリカ:Firament オランダ:Alliander アメリカ:Volt Markets

イスラエル:Solar Changi 英国領ジブラルタル:WePower

電力の個人間取引(Peer to Peer)10社 アメリカ、豪州2社、ニュージーランド、イギリス、シンガポール、フランス、オランダ2社、アンドラ公園

ブロックチェーン応用の消費者とエネルギー市場の直接取引アメリカ2社、アップル・グーグル・アマゾンも大きな資金を投入して研究開発を進めている。

日本の企業はこの中に一社も入っていない。

■ 日本の立ち遅れの原因は政府の姿勢にあると云っても過言でない。
資源エネルギー庁の回答によれば、固定価格買取制度は新規契約については、この制度は廃止され、旧契約者は順次10年をもって終了となると云うが、
①蓄電池や電気自動車などと組み合わせて自家消費を拡大することもできますし、
②引き続き、別の小売電気事業者に売電することもできます。

と云うことで、他人任せでまことに消極的姿勢です。日本政府は頼りにならないと言わざるをえません。

しかしながら、自己防衛の方法があるのです。日本の環境に合った有望分野が存在します。

それは、マイクログリッドです。地産地消がキーワードです。北海道の大規模広域停電で問題となった中央集中の大規模電力網を、地域分散型に転換しなければなりません。

地域分散型・地産地消のカギは大容量蓄電池にあります。幸いにして、このマイクログリッドに最も適した蓄電池が開発されました。現在北電の南早来変電所は北海道電力と住友電気工業が2016年12月に試験運用を始めた大型蓄電池システム実証事業の施設です。(出力15MW、容量60MWhの住友電工製のレドックスフロー電池)

通産省の補助金で行っている大手電力会社の実証実験はあくまでも現在の大規模配電網に適した、プラントのような大規模なものであり、地産地消・地域分散を目指したものではないのです。

住友電工では既にコンテナーサイズのレドックスフロー電池(RF電池)設備が完成し、小口売電業者にも販売し量産効果をたかめる方針です。

ここでRF電池のメカニズムと特徴を述べます

メカニズムについては電極部分・セルと電解液タンクが分離され、ポンプで繋がれていると云う構造です。

1.このため最大の特徴はリチューム電池のように発熱・発火する危険性はまったくないこと、内部ショートしても火災にならない安全性を保証。

2.規模にもよるが、小規模システムでは半永久的といえる耐久性がある。

3.サイクル数(充放電の繰り返し回数)も制限がなく、次世代電池の本命の1つとされている。

4.大規模プラントから小規模(地産・地消)コンテナーサイズにも幅広く対応できる。

5.住友電気工業は、電解液にチタン系材料を採用した新型の大型蓄電池「レドックスフロー(RF)電池」を市場投入する。従来の主材料である希少金属のバナジウムを使わず、性能は同等のまま電池コストを現在の2分の1程度に抑えられる。

通産省や5大電力会社はあくまでも大規模配電網を補完することしか目指さず、地産地消・地域分散とは真逆の方向です。従って最も重要な電力料金の低減には殆ど役立たない。

一方RF電池を利用したマイクログリッドはエネルギー政策の革命とも言えるもので、脱炭素化、自然エネルギーに向かう企業の要請の増大から、結果として電力コストの大幅低下が期待できます。

パリ協定、脱石炭火力連盟(国際機関)、ヨーロッパのガソリン車販売禁止、RE100( 2014年に国際環境NGOが開始した国際的な企業連合。業務に使用する電力の100%を再生可能エネルギーに転換することを目的としている)などが促進要因となり、欧米の企業は競って自然エネルギーへの転換に向かっております。この転換が遅れれば株価に影響する事態も現れています。

このようなメガトレンドは太陽光パネルの量産規模が爆発的に増え続け、量産効果で設備償却費がゼロに近づき電力量も1KW時5円~6円もヨーロッパでは実現可能となっております。

日本の太陽光パネル生産は世界から完全に取り残されているのです。中国・韓国にも差を開けられています。エネルギーコストは産業の浮沈に関わる要素であることから、日本企業の国際的な競争力低下が危惧されます。

唯一残された活路は、マイクログリッド・地産地消・地域分散型のエネルギー政策です。これに適した蓄電技術の代表であるレドックスフロー電池採用によって、失地回復を急ぐべきです。

「大きいことは良いこと」の古き幻想は捨て去り、これからは「コンパクトで効率化」を目指すべきです。原発に拘るエネルギー政策はもはや時代遅れとなっているのです。「原発を維持して国防」など気が狂っているとしか言いようがありません。正しいエネルギー政策こそ国防の柱だと云うことを強調して終わります。