野口悠紀雄一橋大学名誉教授と村上誠一郎衆議院議員の危機感の共通点


野口悠紀雄氏(一橋大学名誉教授)の4月6日 VideoNewsでの発言に注目しました。

「平成を一言でまとめるなら、日本が世界経済の大きな変化から取り残され、その国際的地位を右肩下がりに下げた30年だった」といわざるを得ない。その上で、日本は平成の30年間、世界に何が起きているかわからずに「寝てしまった」。今、新しい時代を迎えるにあたり、平成の失敗を総括し、その教訓を元に改革を進めていかなければ、令和の時代も日本の国際的な地位の低下には歯止めがかからないだろう。

30年前には中国は発展途上国でGDPも取るに足らないものであった。ところが30年経った現在は日本の2倍にまで急速に追い上げてきた。発展途上国の発展は急速であることは当たりまえだが、先進国との比較ではどうか見てみる必要がある。
そこで一人あたりのGDP(国民の生活水準の指標)をアメリカと比較してみた。平成元年には日本がアメリカを凌駕していたのが現在では逆転しアメリカに追い越されてしまった。

2040年の予測を見ると、中国は米国の2倍、日本の10倍になる。これは現在のトレンドが2040年まで続くとしての試算値だ。

野口氏はこのような日本の国際的地位が大きく低落した理由は、努力が足らなくて追い越されたのではなく、世界の変化に気が付かなかったからだ。或いはそれを直視することを避けていたからだと指摘されている。その上で今後対策はあるかについて問うと、「遅きに失し打つ手は見当たらない」と絶望的観測を述べておられる。
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そこで、アベノミクスの再点検をする必要性を強く感じたのです。アベノミクスの目玉、3本の矢の第一は超金融緩和と云う経済政策だったはずです。これが量的緩和だけだったら単なるリフレ政策です。ところがポイントは量的質的緩和(異次元の緩和)にあるのです。

質的緩和とは何を意味するか、これをはっきり云えば「意図的バブル発生装置」としても過言ではありません。ここが欧米の金融緩和と根本的に異なる点です。

政治的意図と結びつければ、21世紀の大日本帝国=世界に輝く日本、内閣府の日本経済再生本部が進めた日本再興戦略、一億総活躍となるのです。
第二次世界大戦では日本は戦費調達のために金融政策としては財政ファイナンスを実行したのです。敗戦によって乱発された戦時国債は紙くずと化したことは記憶に残っているでしょう。この手法が根本的に間違っているのは政府と中央銀行が一体化したことにあるのです。財政法や日銀法を引き合いに出すまでもなく、民主主義の基本は中央銀行の独立性を保つことにあります。

さすが、戦後の日本では表面上国民生活を犠牲にすることを表に出すことは出来ないのです。しかし異次元の金融緩和には致命的な矛盾があることは戦時中と何ら変わりません。「アベクロ異次元緩和」と呼ばれるように、禁じ手であるはずの、日銀が独立性をかなぐり捨てて、政府の言いなりになったことです。これではいくら言い訳をしても戦時中の苦い経験と同じ財政ファイナンス=ヘリコプターマネーに走ったことと違わないのです。

それでは、バブルを意図的に膨らます金融政策の矛盾点を下記します。

1.量的質的緩和によって国債価格が、日銀が市中銀行より買い入れを大幅増加したことにより、償還価格との差が12兆円に及ぶ潜在的損失が発生。

2.ゼロ金利による市中銀行の資金運用の行き詰まり。その結果リスク資産投資への傾倒。スルガ銀行の不正融資、地銀のサブリース。スマートデイズの「かぼちゃの馬車」年収600万のサラリーマンに一億3千万円の借金をせまる。ネオパレス21の欠陥住宅(官庁の検査、民間委託が原因)等々の歪が発生。

3.質的緩和により、日銀がETF(上場企業投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)等のリスク資産への投資拡大。これは実質財政ファイナンスによる国債市場品薄=市中銀行のリスク資産傾倒を助ける役割を演じた。

4.結果として日銀の当座預金残高(借り方計上)が3月10日現在375兆円(総資産の67%を占める)に至った。これは純資産8.4兆円の45倍に相当する。結果として中央銀行の債務超過が目前に迫ってきているのです。

以上をまとめると「21世紀の大日本帝国=世界に輝く美しい国日本」は終戦を迎え抜き差しならない状況に陥った。これこそが野口悠紀雄先生の云われた「日本が世界経済の大きな変化から取り残され、救い道のない迷路に落ち込んだ」原因であります。

安倍政権もこれを放置はできないと云う危機感は持っているのです。だからその対策として「一億総活躍社会」を言い出し内閣府に日本再生本部を設け日本再興戦略を推進したのです。

行き詰まりの結果として、働き方改革、生産性革命、人づくり革命を掲げ、JPX日経400で企業を採点しコーポレートガバナンスの強化の名の下、攻めろ・稼げ・稼ぐ力・収益力・生産性、と盛んに企業の尻叩きを始めたのです。その結果、企業はなりふり構わず、ますます上から下への垂直統治を強め社員を犠牲にしてまでも目先の業績を上げることに専念したのです。

三菱自動車の燃費算定データー改竄(2016年4月)
日産自動の車無資格者・完検印不正使用(2017年9月)
スバルの製品検査の不正(2017年12月)
神戸製鋼の製品検査データー改竄(2017年10月)
東レ子会社の製品データ改竄(2017年11月)
三菱マテリアル子会社3社による不合格品の偽装(2017年11月)

こうして通産省の企業への尻叩きは、すべて裏目に出て生産性向上どころか、逆効果しか産まなかったことになります。加えて人間性を無視した政府や企業トップの姿勢は従業員の士気の向上どころか逆にやる気を失わせ、生産性を落とす結果となったのです。実質賃金の低下、歪んだ上からの押さえつけは社会全体に行き渡り、あらゆる面で「忖度」を生み思考停止が横行する結果となったのです。

経済政策は政治政策と一体化して日本の国際競争力を落とす結果を招き、ついには社会の様相をを変えてしまう事になったのです。実に根深い問題で、野口悠紀雄氏がサジを投げ、金子勝先生が悲憤慷慨し、浜矩子先生が「アホノミクス」と罵倒される心が今になってわかってきたのです。

野党がもぐらたたきに勢力を奪われ、このような本質論が展開できないでいる間は政権を倒すことは不可能です。当面は自民党の中の良心に期待をかけるしかありません。村上誠一郎衆議院議員と石破さんの地方重視政策に期待しています。自民党の内側にいるせいか、この本質論が少なくとも野党の議員よりもよく分かっているのではないかと云う気がします。
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追記: 4月8日村上誠一郎・自民党衆議院議員と望月衣塑子・東京新聞記者のトークショーが御茶ノ水で行われ、出席いたしました。以下簡単にご報告いたします。

村上氏は詳細なデーターを多数用意され説得力のあるお話をされました。経済問題に詳しく、主に現政権による財政破綻の危機について例をあげ「将来にツケをまわす財政政策は大問題だ。子や孫の世代に、高額の医療費や異常に増え続ける軍事費などの財政負担の付け回しを許し、少子高齢化と重なり、とても孫子の世代だけでは負担しきれず、更に後世代に先送りする結果となる」と強調されました。

結果として、これほど不道徳な行為は絶対に許されないと怒りを込めて訴えられました。

当然、財政破綻に至る危機的状況をもたらした根本原因の「中央銀行の政権との一体化」や異次元の金融緩和の矛盾についても、更に外交・格差問題・教育など国際的地位の低下の実情についても詳細にわたり説明されました。

総じて、むしろ野党の政治家より強い危機感を持たれていることが伝わってきました。地方を回っておられて、地方の安倍政権に対する不信が渦巻き、そして地方では自民党地方組織が政権から離れつつあることを実感した。この傾向は更に強まっていくだろうと述べておられました。

望月衣塑子氏の話も迫力があり、実際お目にかかってみると、想像以上の美人で女性的風貌から出てくる歯切れのよい言葉、男性顔負けの激しい政権批判の弾丸、失礼ながら、この柔らかい風貌と歯切れのよい言葉の弾丸が同居する対比の不思議な魅力を強く感じました。

これで、男性はもちろん女性のファンも多い理由がわかったような気がしました。お話の内容も充実しており、菅官房長官や内閣府の漫画的対応にはふきだす場面も多くありました。辺野古問題や無駄な軍事費の実態については数字や根拠あるデータに基づき大変論理的に話を展開されていた事には敬意を表します。

全席満員で予定より多く参加者が参加されました。村上氏は今後毎月いろいろの人をゲストに迎えて、このトークショーをさらに充実させていく方針だと述べられました。

時事

Posted by 8kei