時事

アメリカ商務省は5月17日、中国の通信機器大手ファ-ウエイ(華為技術)を、輸出管理規則に基づく禁輸措置対象リスト(エンティティー・リスト)に正式に入れたことを発表した。

掲載対象は中国深センのファーウェイ本社、日本法人・華為技術日本を含む世界各国の69社。今後は対象法人に対して、アメリカ政府の許可なくアメリカ企業から部品・技術などを輸出できない。過去の事例を踏まえると基本的に許可が出ることはなく、厳格な禁輸措置として運用される見通し。

ただ、CPUもメモリーもアメリカ以外から調達できるので、実質一番困るのはソフトウェア、特にGoogleのソフトウェア群となります。

スマートフォンのOSであるAndroid自身はオープンソースなので、使い続けることは今後もできます。しかし、その上に載っているGoogle製のソフトウェアは今後ファーウェイのスマホで利用禁止になる可能性は否定できません。

アプリ配信ストア「グーグルプレイ」やグーグル製の地図、メールソフトは有償のライセンス供与の形をとっているので、グーグルがこうした基幹ソフトの供給を止める可能性があります。

ファーウェイのアンドロイド版スマホの次のバージョンも「Google Play ストア」や「Gmail」などの主要サービスにアクセスができなくなる可能性もあります。

しかしAndroid自身はオープンソースなので、代替ソフトの開発は難しくはありません。現にファーウエイの日本現地法人(Huawei Technologies Japan)は必要なアプリは用意して日本のユーザーに迷惑をかけることはないと発表しております。

加えて、アメリカの国内行政制度が海外諸国に効力を持つことは、本来であれば、国際法上の問題があります。

中国の王毅外相は「米国は国家の力でファーウエイのような中国の民営企業を理由もなく圧迫しており、経済的ないじめ行為だ」と批判しております。米中通商貿易交渉でどうなるか見守る必要があるでしょう。

■ 更にファーウェイに対するパナソニックの製品供給にも注目しておかなければなりません。

5月23日、日本の主要メディアは一斉にパナソニックがファーウェイとの取引を中止するとの報道を行いました。

日経新聞は、「米国政府による華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の輸出禁止規制を巡り、パナソニックは22日までに該当する取引の中止を決めた」と報道しています。

ところが、パナソニックの中国現地法人、松下電器中国は23日、「ファーウェイに対するパナソニックの製品供給は正常だ。ファーウェイは重要な協力相手であり、同社など中国の顧客への商品販売とサービス提供を続ける」との声明を発表しているのです。

IWJが、中国通のエコノミストの田代秀敏氏に直接取材を行いました。田代氏は、まず、現在の日本のメディアの報道状況について次のように述べました。

「日本の報道では社内文書を見た記者が記事を書いているだけで、実はまだ日本のパナソニックとしては公式に何も発表していない。唯一パナソニックが出している公式文書は、中国現地法人が出している声明だけなのです。それを見る限り、現時点でもパナソニックはファーウェイに製品供給を正常に行っています」と。

いずれにしても、ファーウエイの取引先は「本音と建前」を使い分けていくしかなく、この問題に関してはマスコミの報道を鵜呑みにしていては実態を見過ごすことになるでしょう。

■ 次に、Bloomberg 2019年5月22日 の社説をご紹介しておきます。

トランプ大統領のファーウェイ攻撃、単なるお粗末な計算ミス-社説

大統領はすでに、その一貫性のない貿易政策を進めてきた中で国家安全保障をあまりにも多く持ち出している。ファーウェイ問題で再びそうすれば見るに堪えない前例をまた作ることになり、しっぺ返しを食らうのはほぼ間違いない。現状の手詰まりがさらに悪化し、中国には最終的な合意を守るインセンティブがほとんどなくなる。

結果として、国内で先端技術を生産できるようにしようと、中国が取り組みを加速させるだけだろう。

■ 他にも中国の反応を伝えた情報がありますが、報復の方策について次のように伝えられています。

希土類(レアアース)は、ハイテク製品や軍事装備の製造時に不可欠な材料で、世界の供給の9割を中国が握っている。米国は、希土類の戦略備蓄や独自開発が(未必の故意的に)非常に遅れており、中国の希土類がないと、中国と戦うための米軍の兵器が作れない状態だ。中国が報復手段として希土類(レアアース)の米国向けの禁輸すると云うことも十分考えられる。

更に、中国では米国製品の不買運動が起きている。中国の大企業の中には、社員に対して、ケンタッキーやマクドナルドやP&Gやアップルといった米国製品を買うなと命じるところが出てきている。少し前まで、中国人は米国製品へのあこがれが強かったが、それが喪失していく傾向だ。中国での売り上げ不振は米国企業の赤字化につながり、米国株を押し下げ、金融危機に近づける。

■ 朝日デジタル5月23日

「中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出制限をめぐり、トランプ米大統領は23日、今後の米中通商協議で取引材料に使う考えを示唆した。中国の航空会社13社は、苦境に立つ米航空機製造大手ボーイングへの賠償請求に踏み切った。」

■ MoneyVoice 5月23日の記事

以上の中国有利の見解と真っ向から異なる、中国不利の論説も参考までにのせておきます。

「—では、この新冷戦の勝者はアメリカになるのか中国になるのか。言うまでもないが、答えはアメリカだ。
世界最強の軍事力を持ち、ドル基軸通貨体制によって世界経済を支配し、最強の金融市場を持ち、イノベーションを生み出すシステムを保有し、あらゆる分野でトップを行く多国籍企業がキラ星のごとく存在し、今後も若年層の人口が増えていくのはアメリカである。
とすれば、最終的に新冷戦を制するのはアメリカであり、中国ではない。そうであるならば、今の中国は新冷戦に敗れて崩壊していく。」

■ 短期的にみるとファーウエイのスマホがアジア各地域で下取りできなくなっているなどの過剰反応が起きているが、中長期的にみるとファーウエイ問題は収束に向かう方向にあると言えるのでしょう。

なぜなら、今でこそ激減しているが、昨年来3億台以上の出荷台数があった実績を見ると、ファーウエイのユーザーには全く罪がないので、ユーザーの利益を守る動きが強くなっていくことは確実です。

ファーウエイ製スマホの出荷台数は日本だけでも180万4千台(過去1年間)に及び、全世界でのシェアが第2位であることから、Googleにとってもファーウエイは重要な得意先であり、無視できない存在です。ここでもGoogleは本音と建前をうまく使い分けて行かざるを得なくなるでしょう。

結論として日本市場では、ファウエイのスマホ新機種のP30あたりの発売が遅れるなどの弊害が発生することはあり得ますが、P20などの従来機種について大きな不都合が発生することはないでしょう。

時事

キャッシュレスについて語る前に現金万能主義が果たして我々にとって良いのか悪いのかを吟味する必要があります。

現在の金融事情では財政の事情から超低金利政策が、国と日銀の一体化のもと、長年にわたり続けられています。現金信仰は金利が安すぎることから生じた社会現象の一つでもあります。
銀行の貸し金庫の中に多額の現金をしまい込んでいたと云う笑い話のような話を聞いたことがあります。

ここで、考えなくてはいけない、現金についての弊害を知っておく必要があります。
二つの弊害をあげておきましょう。

一つは「すべての取引が匿名である社会は、マネーと権力を持つ者が罰せられることなく行動できる社会だ。腐敗を積極的に援助する社会なのだ」と云う指摘です。

もう一つは「高額紙幣は多くのOECD加盟国で通貨の半数以上を占めている。その用途は主に隠匿、退蔵、輸出だ。欧州委員会はすでに、現金(具体的には500ユーロ紙幣)とテロとの関係を指摘している。だが、現金はただテロだけでなく、ありとあらゆる類の犯罪行為に最適だ。麻薬の密売であれ、政治家への賄賂であれ、脱税であれ、現金は犯罪を簡単かつコスト効率の良い活動にしてしまう」との指摘もあるのです。

キャッシュレスで取引の匿名性を侵害される恐れと、多額のアングラマネーがもたらす社会的コストを天秤にかけた場合、どちらがデメリットが大きいかを冷静に考えてみなくてはならないのです。

キャッシュレス先進国の中国と、遅れているインドとの比較を参考にしていただきたいのです。

中国には非常に活発なモバイル市場があります。2015年、中国の小売支払い件数の3分の2が非現金だ。2016年、アリベイは1.7兆ドル、ウイーチャットは1.2兆ドル、それだけでもモバイル支払いは年間3兆ドルに近い。それを支えているのが簡単で広く普及しているQRコードです。
この結果、銀行は手数料収入の激減で打撃を受けています。加えてビッグデーターのの取得に支障が出て、融資事業にも影響がおよび、債務不履行が増えているのです。

一方インドでは、モディ首相が腐敗とテロに対抗するため500ルビーと1000ルビー紙幣を流通から引き上げることを宣言しました。それを受けて、大混乱が起きATMには長蛇の列ができたのです。それらの紙幣が、流通している現金の85%を占めていたからです。
このことが原因で携帯電話の契約台数が10億台にもかかわらず、モバイル・マネーを利用しているのは1%にも満たない状況となったのです。特殊事情とはいえ、考えさせられる問題です。

キャッシュレスは小規模決済から始まり大規模決済と向かいます。中国は小規模決済から大規模決済に波及する過程にあります。インドではこの過程を通過せず、大規模決済に、いきなり手を付けたための失敗でした。

この間の壁は分厚く、言い換えれば信用の壁ということになります。新しいテクノロジー(ブロックチェーンやスマートコントラクト)が成熟するまでは個人データー保護の壁が立ちはだかります。

先進国経済の5分の1くらいが非課税で公式な金融システムの外にあることを考えると、税負担は賃金生活者の肩に重くのしかかっているのです。テクノロジーが壁を打ち破るまではこの間のバーターはやむを得ないかもしれません。小規模決済のキャッシュレスから始まれば解決できる筋道かもしれません。

小規模決済のキャッシュレスから中規模の携帯電話振込サービスへと進んでいる例はむしろ発展途上国に多く見られる。ケニアの「エムペサ」が銀行に口座を持たない国民の決済手段として歓迎されたのは当然の成り行きでした。今では銀行ですらエムペサを取り扱わざるをえないところまで普及してしまったのです。

携帯電話の電話番号に紐付けられた口座から現金を預けたり引き出したりできるこのシステムはとてつもない成功を収めたのです。ケニアの人口の3分の2以上が利用し、何万もの代理店ができているのです。

エムペサの代理店の多くは普通の商店なのです。このような店がどうして顧客の信用チェックを行えるのか不思議に思うでしょう。エムペサの予想外だった影響の一つが、エムペサの取引履歴が従来の信用格付代わりに使われるようになったことです。これは銀行の貸付業務にとって驚異的なやりかたとなりました。貧乏な人でも真面目に取引をしていればおカネを借りられる仕組みを生み出したわけです。

日本の銀行が金余りの中で、貸付業務がうまく行かなくなっているのと比べると、学ぶべき点が多くあります。「貸さない銀行」など存在価値が全くありません。日本でコンビニ店が貸付業務まで行う姿を誰が想像できるでしょうか。

いきなり仮想通貨をブロックチェーンやスマートコントラクトから始めるのでなく、少額決済のキャッシュレスや地方通貨などから確実に固めていくべきではないでしょうか。「貸さないから与信情報が集まらない与信情報が集まらないから貸出業務が停滞する」と云う悪循環から抜け出すには、小規模キャッシュレスから再出発するしかないでしょう。

蛇足ながら、私はつい最近、デジタルデバイドの代表のような妻に「簡単スマホ」を買い与えました。「孫にでも手ほどきを受けスマートフォンに慣れておかないと、これからは生活できなくなるよ」と云って聞かせています。