広域停電対策としての大容量蓄電池の役割

マイクログリッド

再生エネルギー、マイクログリッド、大容量蓄電池、電力系統制御などについて個別バラバラに説明してきたのですが、今回の台風19号による広域にわたる甚大な被害をうけて、電気エネルギーの安定供給を災害対策の面から取り組むことの重要性を強く感じました。

災害発生直後のTV討論で自民党政調会長の岸田文雄氏が発言した内容は注目すべきものでした。岸田氏が今回の災害対策として最も重要だと指摘したのは「送電網」と「治水」でした。
この2つは相互に関係し19号台風のもたらした災害対策の主な要素でした。この指摘には司会者はじめ野党の議員もあまり関心を寄せていなかったようですが、おそらくその重要な意味が理解できていなかったのではないでしょうか。

今回は岸田氏の指摘に沿って表記のテーマを紐解きたいと思いました。

送電網については、まず電力系統制御の難しさから解かなければなりません。amazonでこれに関する書籍を検索してみるとなんと大部の本が何10冊も現れ、明らかに専門分野の複雑な理論体系のように見受けられたのです。従ってあまり専門的なことはよくわかりませんが、簡単に云ってしまえば、地域独占の電力会社はなんの事情かわかりませんが、どうしても大規模送電網を維持することが必要なようで、その管理・制御に汲々としているのです。そのデメリットがあまりにも大きいにも拘らずです。地域別の送電・受電のバランスが崩れると周波数の乱れなどが生じ大規模電力網につながる設備や機器に重大な運転上の障害を与えると云うのです。ここで言えることは電力会社が地域独占であり、何らかの意図で大規模電力網を持ち、その維持管理に苦心していること、更にそのことがブラックアウトの遠因をつくっているらしいことなどです。

上記の送電量の調整がどのように行われているかはブラックボックスとなっております。最近新聞紙上で「準備放流」とか「事前放流」の是非について触れられた記事が見受けられますが、これには明確な答えが出ていません。推定でしかものが言えませんが、送電量の調整は揚水発電や火力発電に少なからず依存していることは間違いないでしょう。揚水発電には混合型と単独型があります。混合型は発電目的のダムに揚水機能を持たせたものです。即応性から考えるとこのタイプが容量的にも優れており、即応性と大容量化への立ち上がりの速さで火力発電に優るのは明らかです。従って混合型揚水発電が電力系統制御に多く用いられているものと考えられます。残念ながらその詳細についての報道が一切ないのです。

岸田氏には、もう一歩踏み込んで「送電網」の最大の問題点であるところの「電力系統制御」に触れていただきたかったのです。当然この問題が「治水」にも関係するのですから。

前置きが長くなってしまいましたが、これから大容量蓄電池のはたす役割について述べてみたいと思います。大容量蓄電池は、自然エネルギーの不安定性をカバーするためにも、またマイクログリッド(エネルギーの地産地消)を促進するためにも必須であることは明らかです。その上でこれが防災の主役となる可能性を持っているのです。今までの投稿記事をお読みになった読者の方には、大容量蓄電池が揚水発電に変わる役割を持つことができる可能性をご理解いただけるものと考えます。

ただし、マイクログリッドは局地に同時多発的に普及させる事はできても配電網全体の問題解決には結びつかないことは明らかです。従って当面、電力系統制御を無視するわけにはいきません。「地域独占を肯定するのか」とのご批判を受けるかもしれませんが、マイクログリッドを強力にすすめることを前提条件として「送電網」対策も当面放置できないでしょう。

レドックスフロー電池を推奨してきたのはマイクログリッド推進のために最適だと考えたからでした。「送電網対策」となれば当然、液体水素・NAS電池・リチューム電池の検討も視野に入ってくるのですが、安全面での改良がこれらの蓄電技術で進められているものの、用途を考えると、レドックスフロー電池がマイクログリッド推進に欠かせない存在であることは変わりません。
系統制御を目的とするなら、北海道電力南早来変電所の大型蓄電システム緊急実証事業のレドックスフロー電池プラント導入事例が参考になります(出力15MW,容量60MW/h)。

液体水素は自然エネルギー移送の手段に過ぎず、NAS(ナトリューム硫黄電池)は火災発生以後安全性対策がすすめられているものの負極にナトリュームが使われていることから潜在的問題が残されています。更にリチューム電池は吉野彰氏のノーベル賞受賞で明らかなようにマイナス極に炭素材を使うことで安全性が向上したのは間違いありませんが、現状では依然として小規模(家庭用向け)の生産が主流です。

2019年11月以降、FITで売電をしていた家庭において、固定価格での買取保証期間が終わる家庭がでてきます。その数は2019年だけで約53万件とも言われています。期間終了後に何もしなければ、そのまま大手電力会社に電気を流すだけとなりますので、選択肢として蓄電池を購入するという人もあります。「災害時に活用可能な家庭用蓄電池システム導入促進補助金家庭用蓄電池システム ※太陽光発電設備は補助対象外」がありますがこれも二次公募:2019年10月1日(火)~2019年11月29日(金)12:00(必着)で終了します。補助金なしの場合、容量によって異なりますが、100万円~200万円かかります。一家庭ごとに蓄電池設備を導入するにはコスト的に合わないでしょう。このような現状から、どうしても地域別、企業別、集合住宅ごとに導入し一軒あたりの導入コストを下げることが必要となってきます。

最近私の知人から次のようなアイデアが寄せられました。
避難所が小学校・中学校となっているケースが多いので、避難所ごとにコンテナー型レドックスフロー電池(複数ラインナップ)を設置し、更に集光型太陽光発電(2軸追尾架台&レンズ付きモジュールを備えた高性能太陽光電池、いずれも住友電工横浜製作所製)と組み合わせたら一学校区の3000軒の安定電源を賄うことができるのです。

エネルギーの地産地消=マイクログリッドの普及の出発点としては理想的なアイデアだと思います。設備償却がKWあたり5円程度であり安全性は抜群、繰り返し充放電に強く、寿命も他の蓄電池に比較して群を抜いて優れているなどの特徴があり、地方自治体への提案・協議の上、是非推進したいと考えております。

時事

Posted by 8kei