「命を守る行動」とジョージ・ソロスの「再帰性理論」

「命を守る行動」という言葉が、台風19号の甚大な災害以来よく聞かれるようになりました。
今回はこれを更に拡張して「社会的事象にも当てはまるのではないか」と云う課題に挑みたいと思います。

本来「命を守る行動」は生き物に備わった基本的な特性であった筈です。つまり生命の歴史の中で種の保存にとってこれは必須条件であり、これが弱ければその種は滅び、淘汰されたのです。

例えば小鳥が巣から首を出してしきりに周りを見回している光景を見たことがあるでしょう。これは巣の中の卵や生まれたばかりの子を守っているの姿なのです。子の生命を守るために懸命に周辺の情報を集めているのです。

このような生きもの生来の本能が失われた人間社会において、甚大な自然災害に襲われた場合、ことさらに「命を守る行動」を叫ばなくてはならない事態がおこっているのでしょう。

「命を守る行動」の第一歩として情報の収集がまず必要だと云うことは前の投稿でも書きました。このことは自然現象でも社会的事象でも同じですが、社会的事象では金融恐慌の場合など、多様な情報収集がより一層重要であることを指摘しておきたいと思います。

最近投資家の間で、ドル建て外国小切手の取り立てが金融機関で煩くなってきていると聞きます。表面上はマネーロンダリングを水際で防ぐためと言われていますが、今まで以上のチェックを行うように金融庁から通達を受けているからだと云う情報もあります。折しも折り米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ決定によって、世界中の中央銀行が一斉に量的金融緩和に逆戻りしているのです。米国では既に50年国債の発行が検討されているのですが、財務長官は100年国債の計画に言及しております。(米国の金利は1.8%~2.0%でさらなる利下げの余地はある)

日本の米国債保有高は中国を抜いて、直近のデーターでは1兆1308億ドルと世界第一位となっているのです。中国は米中貿易摩擦を背景に少しづつ減らしているので、米国の長期債を買わされる対象となるのは日本であることは間違いありません。買わされることはなくても買い替えを要求される可能性がもっと高いのです。

日銀の日本国債保有高は10月20日の日銀毎旬報告によると482兆円で、500兆円に迫りつつあります。金融緩和の出口が見つからず、既にマイナス金利で金利操作の余地は無く、イールドカーブ・コントロールに頼らざるを得ない状況で、政策の振れ幅が一層狭くなっている窮状は明らかです。日銀自体が債務超過に陥る危機さえ懸念されます。

永久国債は一種のヘリコプター・マネーだと云えます。MMTも金融恐慌の心配のない状況であればともかく、金融緩和が行き詰まった現時点での実行は不可能です。社会保障の財源をMMTに求め、更に金融緩和をすすめ消費税廃止やベーシックインカムを公約する左派政党など、ポピュリズムの極致にして無責任で不道徳だと言わざるを得ません。これに騙されるようでは自己防衛は不可能です。

逃げ道を失った日本の金融政策の行き着く先は「金融封鎖」だと警戒する見方が投資家の間で強まっているのもこのような事情からです。いずれにしても無利子の永久国債など民主主義国家では存在しません。強引にやるとしたら共産主義国家になってしまうでしょう。


天才投資家ジョージ・ソロスは「再帰性理論」の中で自然現象と社会的事象の違いを次のように説明しております。

ソロスは世の中に存在する事象を、次の2種類に分類しました。

自然現象:例えば台風がやってくる
社会的事象:金融恐慌がやってくる
「台風がやってくる」という自然現象は、人間の思考とは無関係に存在します。ところが「金融恐慌がやってくる」には人間の思考が介在しその情報は多岐にわたり、その結果は多様で不確実性を伴うのです。それがソロスの云う社会的事象につきまとう「可謬性」です。

社会的事象の中でも政治的問題となりますと更に複雑化し一定の解はないのです。「社会的事象」には、人間の誤解や間違いがもともと入っていると云うのが現実です。

従って社会的事象に関しては「あなたの解」しかないのです。そして「あなたの解」はエゴイズムの塊かもしれません。身を守る行動に絞り込めば同じ解を持つ仲間が増えるでしょう。しかしそのために努力して集めた情報、それを他者と分かち合うことは普遍的で愛に満ちた行為ではないでしょうか。

事実、私はジョージ・ソロスの「再帰性理論」を学べば学ぶほど、彼が単なる金儲けに専念するエゴイストではないと確信したのです。彼の理論はまさに哲学と云って良いレベルです。身を守る考え方を惜しみなく説き、他者に分け与える姿勢はまさに愛に満ちたものです。

ジョージ・ソロスの書籍『ソロスの講義録/資本主義の呪縛を超えて』は、絶版になって手に入りにくいかもしれませんが、図書館や古本だったらあるかもしれません。

「自分を大切に出来なければ、他人を大切にすることも出来ない」と云うのが私の信条です。

時事

Posted by 8kei