社会

テクノロジーの急速な発展は私達の社会に明るい未来を約束しているかのように見えます。

キャッシュレスの将来の姿を予測するには、その進化の歴史をたどる必要がああります。
クレジットカードの時代から電子マネー、モバイルペイメント、顔認証決済・音声決済・IoT決済と進化を遂げたのです。そして、第4世代の決済はすでに中国で実現しつつあります。アリババの本拠地である杭州のスマートシティーで体験できます。

キャッシュレス化は他の技術革新と連動して展開されます。EVとの協調、キャッシュレス化・無人化・自動化・シェアリング化・サービス化との連動です。

日本で少子高齢化が進み構造的に人手不足が進む中では、自動化による無人化に向かうのが当然の流れです。PEST分析=政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の視点で分析すると、サステナビリティー(持続可能性)やシェアリングと云うキーワードが明るい未来を想像させてくれます。

投資の世界でも環境の変化を背景に「サステナブルでない会社」は投資の対象から外されるといった動きが投資家の間に出てきつつあるのです。

シェアリングはキャッシュレス化、自動化と結びつき、発展してきております。この方向も環境の変化に対応し、過去の大量生産・大量消費が持続できなくなってきたことの現れです。

銀行の「担保主義」のレガシーは、新興フィンテック企業のデーターに基づく本質的な審査(信用データーをビッグデーターとして蓄積)に負けるのは当然の成り行きです。「時間がかからない」「自動でしてくれる」「取引をしていることを意識しないで済む」など圧倒的な優位性があるのです。

リーママンショックで多くの企業が退場したのですが、ただ退場しただけで退場してしまえば失敗の原因を活かすことにはつながらなかったのです。

前回もご紹介したように、日銀の7月10日の営業毎旬報告をみても国債保有高は478.5兆円、ETFを含む金銭信託は27.1兆円、でリスク資産が総資産に占める割合が、総資産566,6兆円に対し89%も占める現状。しかも当座預金が403.2兆円も「ブタ積み」となり産業の復興に寄与していない現状。これらはどう考えても健全な金融・財政状況ではないでしょう。

アベノミクスの根幹は2013年の「量的質的金融緩和政策」にあります。その系譜をたどればアベノミクスはすでに行き詰まっている事がわかります。

2014年10月には、国債の買取目標額を年間80兆円から100兆円にするとともに、ETF(上場投資信託)などのリスク資産の購入額を1兆円から3兆円に引き上げました。この効果は円安株高の景気を底上げする効果を生みました。

しかし、2015年4月に消費税増税を堺に実質消費が落ち込みインフレ期待値が下がり続けたのです。目標のインフレ率2%が達成できないと見るや、2016年1月29日に日本銀行はマイナス金利付き量的・質的金融政策に踏み切ったのです。

さらに、2016年9月21日には、金融緩和の効果を一層強化するため「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」と称し、長短金利を操作目標に加える「イールドカーブ・コントロール」及び消費者物価を安定的に2%を超えるまで微調整を行うことになったのです。

これについては黒田総裁は今年の4月の記者会見で「イールドカーブ・コントロール」は専門的で大変難しく苦労していることを打ち明けました。

前年比2%増の物価目標は何度も達成時期の先送りを余儀なくされ、金融政策は迷路にはまり込んだのです。正に出口を無くした状況に直面し苦悩しているというのが、偽らざる認識なのです。

この状況の中でどうして反緊縮のバラマキができるのでしょう?
MMTは米国ではすでにバニー・サンダースが距離を置き始めています。日本の状況は米国より深刻です。この状況でMMTを振りかざすのは現状無視としか云えません。今、MMTを根拠としたポピュリズムの流行を警戒する必要があるでしょう。

金融緩和の行き詰まりと金融破綻の問題はどこにあったのでしょうか?
「バブルの物語」の著者、経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは次のように語っております。「新規のものが生まれているように見えても本質は何も変わってはいない」バブルの絶頂期にあっては、優れたプレーヤーであってもそれをバブルだとは見抜けないのです。

結局のところ、リーマンショックまでの米国の金融産業は「金融が価値を生み出す」と信じ込み、金融とは本来、単体ではなく、様々な産業と結びつき価値を生み出す機能だということを忘れていたのです。

折角、テクノロジーの発展が明るい未来を約束しているにもかかわらず、日本においては、金融政策や産業政策がこれを妨げているのです。

アマゾン・ゴーの画期的実験

アマゾン・ゴーでの買い物客は自動改札機のようなゲートにスマホをかざしてアマゾンIDを認識させて入店し、あとは陳列棚から商品をピックアップするだけ。そのまま店を出ると自動的に決済され、スマホにレシートが送信されるという仕組みです。

アマゾンのサービスは買い物をしていることを意識することもないほどに私達の生活に浸透しきろうとしているのです。そしてアマゾンの試みは企業側の生産性向上や人で不足解消の論理からではなく、あくまでも顧客の満足度向上のためであるということです。

この実験の目的は
1.人が人間として持っている本能や欲望に応えること
2.テクノロジーの進化により高度化する「問題」や「ストレス」を解決すること
3.「察する」テクノロジー
4.顧客に取引をしていることを感じさせないことです。

「顧客第一主義に徹する」「人とスキルに投資する」「垂直統合から水平統合へ」
顧客が潜在意識レベルにおいても自然で快適であるようにすることを目的としている。そのためには、顧客が「自分に対応している社員が自然で快適に仕事をしている」と感じなければ、優れたエクスペリエンスを得られていると感じることは困難なのです。

以前、観光立国が叫ばれた日本において「観光は自然の景観だけが資源ではない。そこで暮らす人々の安定した生活、精神的豊かさや土着の文化なども有力な観光資源となることを忘れてはいけない」と云われました。

ケヴィン・ケリー(米国のテクノロジー評論家)は著書の中で次のように述べています

「これからの30年を考えると、最大の富の源泉は、最も面白い文化的イノベーションの延長線にある。新しいシェアの形を見つけた会社が、最速で最も評価されるだろう。シェア可能なものは、思想や感情、金銭、健康、時間など何でも、正しい条件が揃い、ちゃんとした恩恵があればシェアされるだろう」と述べています。

テクノロジーの進化により、あらゆる個人のスキルがおカネに変えられるようになります。そして、シニアの人たちの年齢や経験を積み重ねたからこそ持っている貴重なスキルもその中に入るでしょう。

そして、「新たな社会における、新たな価値や価値観を表象する、新たな金融システムが現れ、普通の人が家の中で持っている普通の品物など、流動性が低いもの、人が持っている様々なスキルなどが、新しい資産となるだろう」

結び:トマ・ピケティーのr>d、金融資本主義の矛盾はテクノロジが解決するかもしれない。

このような視点がテクノロジーの発展に伴い金融の世界でも「価値観の変革」と云う形で現れてくるのでしょう。ただしこれには条件があります先ず政治が変わらなければなりません。競争社会、格差社会、弱者切り捨てが続く限りは、テクノロジーだけでは救い道はありません。次世代型テクノロジーは価値観の変化を伴うからです。

政治も産業も根本的に変わる必要があるのです。垂直管理から水平管理への移行、人間性無視の管理体制から人の能力をフルに引き出す人間尊重の体制への移行が必須条件となります。

もちろん科学技術の発展はこの変革の必然性を強力に押し上げる力を持っております。しかし、日本の現政治体制はあまりにも前近代的で、これの阻害要因になりかねないのです。日本の悲劇はここにあります。野党議員の多くはテクノロジーについても金融経済についても無知です。逆に権力がテクノロジーを悪用して、格差拡大・弱肉強食の世界を維持強化する恐れすらあります。

次回は、これを突破して新しいテクノロジーの恩恵を生活者にもたらすのはどうするべきかについて、世界的に有名な投資家ジム・ロジャーズの最新著作の紹介をまじえてご紹介したいと思っております。

社会

資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーは2012年7月~13年6月までで304.9万kW分が導入された。
内訳は、太陽光発電が291.3万kWと96%を占め、以下、バイオマス発電(6.8万kW)、風力発電(6.5万kW)、中小水力発電(0.2万kW)、地熱発電(0.1万kW)と続く。また、太陽光発電の認定済み設備容量を加えれば2091万kWとなる。
太陽光発電は日の出とともに発電を開始し、正午でピークを迎える。その後は発電量が低下していくケースが一般的だ。風力発電は「風任せ」で発電量は常に変化する。こうした問題を解決するため、系統安定化に向けて本格導入が検討されているのが大容量2次電池だ。

太陽光・風力はこのように安定性を欠くため、ベースロード電源には原子力発電が必要とされ、当局はこれを基礎としたベストミックスを描いていた。
ところが近年急速に再生可能エネルギー向け大容量2次電池の開発が進み、一部で実用化が進められている状況を見ると、通商産業省主導の原子力発電をベースロード電源とするエネルギー政策は、見直されなければならない。

福島第一原発事故を踏まえ日本は大胆に脱原発にエネルギー政策を切り替えるべきであった。日本の事故を受け、ドイツでは2022年に原発ゼロを目指し、いち早く再生エネルギーへの切り替えを開始し、2018年には40.4% (風力が20.4%、太陽光が8.4%、バイオマスが8.3%、等) を占めるに至った。

北欧や米国では風力発電のコストがKWあたり6円、ドイツの太陽エネルギーのコストは日本の3分の1以下になっており、近い将来KWあたり5円以下になる。太陽パネルの大量生産による設備償却費の激減がこの要因であり、太陽光パネルの需要規模が日本とは比較にならず、量産効果が急速にあらわれた。この結果、ドイツ・北欧では太陽光パネルの価格が飛躍的に安くなっている。

日本は原子力に拘っているうちに、再エネの国際競走争力を失ってしまった。しかしながら失地回復の余地はまだ残っている。カギは「エネルギーの地産地消(マイクログリッド:末尾の注参照)」にある。太陽光発電や風力発電を、広域集中の配電網から解き放ち、地方分権管理への移行を図るべきだ。このためには大容量の蓄電システムが不可欠となる。

再生可能エネルギー向け大容量2次電池として期待されているのが、NAS電池、リチウムイオン電池(LiB)、レドックスフロー電池だ。まずこの三つの電池を比較してみよう。

特徴異なる3つ電池(主要2次電池の性能比較)

■ NAS電池の特徴は、(1)エネルギー密度が高い(鉛電池の約3倍)、(2)電解質が固体のため自己放電がなく、エネルギー効率が高い、(3)長寿命(15年以上)、(4)可動部分がなく保守が容易、(5)完全密閉型で排ガスや騒音が出ないことなどが挙げられる。
しかし、10年2月、11年9月には同電池が原因で火災事故が発生したため安全性が懸念されている。
その後、原因究明と対策に積極的に取り組み、火災事故の原因および延焼防止対策を実施した。そして、危険物保安技術協会を事務局とする第三者委員会の検証により妥当であると評価された。これを受けて12年下半期から受注を開始した。

■ リチュームイオン電池(LiB)は、スマートフォン、携帯機器、民生用機器、非常用電源、電動工具、電動バイク、電気自動車とあらゆる用途に採用されている、我々の生活に最も身近な2次電池だ。小型2次電池の分野では、性能としてはトップクラスではあるが、大型用途での導入が遅れている最大の要因が高い導入コストだ。現状、1kWh10万円程度と言われているが、単純に計算すると1MWhで1億円となってしまう。また安全性についても不安がある

■ レドックスフロー電池は、エネルギー密度は低いものの、サイクル数が1万回以上と圧倒的に高いほか、バナジウム、鉄、クロムなど燃焼性の低い物質を使うため安全性にも優れている。逆にエネルギー密度が低いため小型化には不向きで、もっぱら大型用途が中心となる。国内では住友電気工業(株)(大阪市北浜)が製品化している。

同社は2012年7月から横浜製作所(横浜市栄区)において国内最大規模の集光型太陽光発電装置とレドックスフロー電池を組み合わせた実証実験を開始した。また実用サイズのコンテナ型蓄電池を使った実証実験に入った。(トップの写真)
以上の「主要2次電池の性能比較」は、半導体産業新聞の記事を一部引用させていただいた。

(大容量2次電池の比較は別表参照)
別の情報では、住友電気工業は2019年度にも、電解液にチタン系材料を採用した新型の大型蓄電池「レドックスフロー(RF)電池」を市場投入する。従来の主材料である希少金属のバナジウムを使わず、性能は同等のまま電池コストを現在の2分の1程度に抑えられる。材料やセル構造などの改良を重ねて20年度に1キロワット時当たりのコストで3万円以下を目指し、大型蓄電池で先行するナトリウム硫黄電池(NAS)などと競う。

大型蓄電池は、発電量の変動が大きく送電網に負荷がかかる再生可能エネルギーの貯蔵用などで市場拡大が見込める。国は余剰電力貯蔵用電池の開発を推進し、1キロワット時当たり2万円以下を目指している。ただし、これは再エネのための大容量2次電池とは性能が全く異なり、技術的にもよりハードルが低い。

レドックスフロー電池(RF電池)の特徴はこの電池の構造と電解液の組成からきている。RF電池はセルの中で電解液を循環する方式の蓄電池で、住友電工が業界に先駆けて実用化。蓄電容量の大型化が容易なほか、使用できる期間は他の2次電池と比較して圧倒的に長寿命、更に電解液、セルスタックなどが不燃・難燃材料で安全性が高い。同社は北海道で容量6万キロワット時の世界最大級のRF電池を稼働したほか、米国や台湾でも実証実験を進めている。

現在、横浜製作所で実証実験がすでに終わって、商品化を進められているコンテナー方式は、我々がもっとも注目している設備で、これこそがエネルギーの地産地消を担う基幹設備となる。

電極部(セルスタック)と電解液のタンクが分離され、ポンプでタンクから電解液を必要に応じ送り込む構造となっていることが、大容量で長寿命、しかも安全性が高いと云う特徴を生み出している。(左図参照 )

注:マイクログリッドとは?

電力と言えば、大型発電所で多量に作られたものが送電線によって家庭や職場に供給されているものが殆どです。
ところが、こうした電力供給システムでは長距離の送電を行わなければならず、その際に発生する多くの電力損失や環境への影響が避けられません。また災害などが起これば周波数変動により地域全体が停電になってしまうリスクもあります。そこで近年注目されているのが「マイクログリッド」です。

電力消費者の近くに小規模な発電施設を設置し、分散型電源を利用することで安定的に電力を供給するという仕組みです。これには太陽光・風力発電等に対応した、安定的な大容量2次電池が不可欠です。

尚マイクログリッドとは目的が異なる大容量二次電池には、NECの系統電力品質確保のための、大型蓄電装置やフライホイールを用いた電力の局所一時保存の装置があるが、AI・IoTを応用して発展する可能性があることを付記しておく。