脳科学


先日、大脳皮質を構成する「シンギュラリティー」について投稿しましたが、今回はAIの歴史的変化と現状について考えてみたいと思います。

AI元年は色々な見解がありますが、「記号処理型AI」が現れた1970年代がAI元年とするのが妥当だと思います。この時点では数学や物理の公理や定理を数式と云う記号によって表現するにとどまっていました。

1980年の半ばから後半にかけて、より汎用性のあるAI、ルールベースのAI(エキスパートシステム)が開発されました。しかしこのシステムも現実社会の多様性や変化に柔軟に対応することはできませんでした。各方面の専門家が条件をシステムにあらかじめ覚えさせると云う前提条件があったからです。
大勢のAI技術者と各方面の専門家を常時待機させていないと、現実の変化に追従出来ないと云う致命的な欠点があったのです。この点で、1970年代に失敗した「記号処理型AI」と本質的に同じものだったのです。

1990年代に入ると以上のAIの欠点をカバーし、より柔軟で現実社会への適応性が強い「統計・確率」をAIに導入する方法が考えられました。これを基礎としてビッグデーターやディープラーニングと結びつける高度なAIへと発展しました。

超高速プロセッサーや大容量の記憶装置と多彩なセンサーがAIを助け、自動運転・遠隔医療・単能ロボット、自立型音声認識などが実用化されるようになりました。

2010年代に入ると脳科学がAIに応用される様になり、「ディープ・ニューラルネット」の研究開発が進められるに至りました。ニューラルネットと機械学習の結びつきはAIを別次元に発展させたのです。

以前、脳科学の初歩的知識をご披露しましたが、大脳皮質を構成する脳細胞は1000億個以上に及びます。しかし人間が日常、感覚器官を使って脳を働かせている部分はごく一部にすぎず、スパコンを使って数百億のニューラルネット(必要なシナプスの数を併せ持つ)をつくることが可能となってきています。

現在どちらかと云えば脳科学の方がディープ・ニューラルネットについていかれない状況です。このため人間の感覚・直観・思考の解明とAIとはまだまだ距離があります。AIで外界に反応して、感じ、思考し、判断して行動する。このような完全自立型ロボットは、はるか遠い世界にあると云わざるを得ません。

ただし自立型の分野で、自動運転・自動配送・自動翻訳・自動作曲・自動著作など単機能の実用化は近年期待できるものとして有望です。

参考までにビル・ゲイツ氏や英オックスフォード大学マイケル・オズボーン博士の予測する、将来仕事を奪われそうな職種を列記します。

電話による販売員
データー入力
銀行の融資担当
簿記・会計監査
小売店などのレジ係
料理人
タクシー運転手
理髪業者

これらは例示にすぎません。あげられた職種の中に非定型的仕事(料理人・タクシー運転手・理髪業者)が含まれていることに注目です。AIの進展により、従来の予測に挙げられていなかった分野が入ってきていることに気づきます。つまり、創造的職業以外はほとんどの職種が将来仕事を奪われるのです。

人手不足の問題も近視眼的に考えると大変な落とし穴にはまると考えなければいけないでしょう。

更に、AIに関して政治が関与してきた実例が現れました。これには、強い関心をもって注視していく必要があると思います。

テレ朝ニュー:スーパーシティ構想実現へ初会合 地方創生の起爆剤[2018/10/29 23:29]より

AI(人工知能)やビッグデータを活用した新たな特区「スーパーシティ構想」を実現するため、有識者会議の初会合が開かれました。担当の片山さつき地方創生担当大臣は地方創生の起爆剤としたい考えです。
片山地方創生担当大臣:「この取り組みは、国家戦略特区制度という岩盤規制改革の突破口にとっても全く新たなチャレンジとなります」
スーパーシティ構想は、国家戦略特区を活用してIT技術を使ったキャッシュレス決済や自動運転技術など、未来都市の実現を目指しています。29日に行われた有識者による懇談会では「ビッグデータを駆使する以上、個人情報を守るための住民の合意が前提になる」といった意見が出たということです。来月中に基本構想を取りまとめたうえで、来年度の予算案にも反映させたい考えです。

また先日、NHKラジオに竹中平蔵氏(パソナ会長・特区の中心的推進者)が出ておりました。新型特区を画策していて、問題の片山さつき地方創生担当相とタッグを組んで「スーパーシティー構想」を進めております。同氏は平然として「AI・ビッグデーターを使って新しい都市をつくるには個人データの収集に関するいろいろな意見をまとめる強力な指導力が必要だ。強力な首長の都市を特区としなければならない」と述べております。まるで「スーパーシティーは強権発動してでも押し通す」と云っているように聞こえます。第2の加計問題を生む可能性もあるのではないでしょうか。

AIの技術はこの他にも負の側面をもっております。雇用の破壊、新しい格差が生まれること、軍事利用による人命の軽視、個人情報の拡散、運用の不適正、環境や健康への影響、等々です。

ある投資コンサルタントの言葉をご紹介したことがあったと思いますが、「この時代にインターネットを使わないで生きるというのは、あまりにも非効率で前時代的で危険な生き方だ」と云うことでした。この言葉の「危険な生き方」の意味は「個人にとって」であったと思います。
この言葉を別の事柄に適用すれば、「AIの利便性は、社会にとって常に危険性をはらむものと理解しなければならない」ということになるでしょう。

脳科学

腸内に寄生する微生物の働き
40億年前に地球上に原始細胞(バクテリア)が出現しました。
10億年前には多細胞生物が出現しました。
30万年前から現代にかけて、人類の出現と科学や文化の発展がありました。

40億年の生命の歴史のほんの一点に過ぎない人類の歴史の中だけで、この複雑な生命体が進化を遂げたとするとは考えにくいことです。 初期は、単細胞微生物が長い歴史のなかで進化し、しかもそれは海中の藻や地上の植物との共存関係の中で進化し続け、やがて多細胞動物との共生関係の中で急速に進化したのです。しかもその進化は人類(宿主)との共生の中で、宿主自体の神経系・脳とのコミュニケーションを図りながら、宿主自体の進化を応援したのです。

「寄生と共生」をもっと具体的に説明すると、寄生は宿主の利益にかなうものでなければ、淘汰されてしまいます。微生物は宿主とのコミニュケーション能力を身につけ、宿主の生存に寄与していたのです。反対に時には宿主の生存を脅かす働きもしました。トキソプラズマや狂犬病ウイルスなどがそうです。宿主は自然淘汰(病の発生による死滅)と云う反撃の手段をもって不利益な遺伝子を淘汰しました。

微生物の生存本能が、自然選択による試行錯誤を長期にわたってくり返すことによって、微生物にシグナル分子とレセプター分子の能力を獲得させたのです。シグナル分子は腸管の神経系に働きかけ、ホルモンや消化管ペプチド・サイトカインなど神経伝達物質に似た働きをします。さらに神経系統の軸索を通じ脳に影響を与えます。少なくとも内臓感覚・筋肉感覚が関与する意識に深くかかわっていると考えられます。

近年腸内環境が健康に与える影響がたびたび話題に上ります。宿主の免疫力・遺伝子伝達にも大きくかかわっていると云う研究報告もあります。また、胎児が出産時母体から受け取る腸内細菌フローラが一生の健康に大きくかかわることが実証されております。

生命の歴史、グリア細胞の不思議

脳細胞は1000億個余あると云われます。この内、記憶だとか思考に関係するニューロンは約4分の1の約250億個です。残りが最近注目されているグリア細胞です。このグリア細胞はニューロンの修復・ごみ処理・血液からの維持要素の供給などを受け持ちます。

ところが以前から分かっていた神経系統への伝達経路にも関与して、慢性的痛みの元凶だとも言われております。更に情報伝達機能がニューロンと全く異なり電気的に探索できるものではありません。以前にもお伝えしたことがあると思いますが軸索細胞の化学的な変化によって発生する電荷を次の細胞に伝達するという原始的やり方に基づいております。しかし伝達スピードを上げるための絶縁など驚くべき巧妙な機能を併せ持っているのです。

このような万能性から最近の研究ではニューロンが死滅した場合これを短期的に補完する機能が発見されております。

痛みの元凶とニューロンを補佐する機能を併せ持つ、ある場面では悪玉でありある場面では善玉だと云う不思議な存在なのです。

精神障害や認知症にも深く関与し、慢性的痛みの発生に関与するグリア細胞の機序は私たちの健康に重要な役割を持ち、今後の研究の発展に重大な関心を持つ必要があります。

旧来の脳科学の研究はニューロンの研究に重点が置かれグリア細胞には注目が向けられておりませんでした。これはニューロンのはたらきが電気的にとらえやすいことからきていたのでしょう。グリアの働きは多岐にわたり、単純に電気的にとらえられるものではありません。

グリア細胞にはアストログリア、オリゴデンドログリア、ミクログリアがそれぞれの役割を分担しております。神経軸索は電気信号が導線を伝わるような機能ではなく、活動電位と云って神経軸索の表面にある「電位依存性ナトリウムイオンチャンネル」が開く際に神経軸索の内側に向けて電位変化が生じます。その結果、それが刺激になり、変化したすぐ隣に存在する別の「電位依存性ナトリウムイオンチャンネル」が開きます。そうすると、またその範囲に電位変化が生じて、それが次々と隣へ伝わります。

この様な電位伝達は効率は悪くスピードが遅い筈です。ところがオリゴデンドログリアは軸索に巻き付き、巧みな絶縁機能を発揮し、アストログリアと協同して新幹線並の伝達速度を実現するのです。

ミクログリアはニューロンの廃棄物処理と修復機能を受け持ち、アストログリアは血管から脳細胞に養分を供給する役割を演じているのです。すなわち、グリア細胞は原始からニューロンの高度な脳の働きに至る橋渡しをすると同時に、自己の機能向上も果たしているのです。グリア細胞は人類以前の進化過程でも動物に備わった原始の細胞なのです。

以上を踏まえるとグリア細胞が生命力に溢れていることが理解できるでしょう。マウスの実験では脳が虚血状態に陥ってもグリア細胞は数時間は生き残ることが証明されております。グリア細胞は虚血条件に対して格段に高い抵抗性を持ち、培養常態では酸素もブドウ糖も無くても10時間位は平気で生き続けられるのです。

生命の歴史は自然の法則を物語っている
以上、腸内細菌とグリア細胞について述べましたが、いずれも原始につながっている点においては共通です。従って生命の歴史を知ることは 人間の生き方や基本的な考え方の重要なヒントになるのではないかと考ております。