時事

「命を守る行動」という言葉が、台風19号の甚大な災害以来よく聞かれるようになりました。
今回はこれを更に拡張して「社会的事象にも当てはまるのではないか」と云う課題に挑みたいと思います。

本来「命を守る行動」は生き物に備わった基本的な特性であった筈です。つまり生命の歴史の中で種の保存にとってこれは必須条件であり、これが弱ければその種は滅び、淘汰されたのです。

例えば小鳥が巣から首を出してしきりに周りを見回している光景を見たことがあるでしょう。これは巣の中の卵や生まれたばかりの子を守っているの姿なのです。子の生命を守るために懸命に周辺の情報を集めているのです。

このような生きもの生来の本能が失われた人間社会において、甚大な自然災害に襲われた場合、ことさらに「命を守る行動」を叫ばなくてはならない事態がおこっているのでしょう。

「命を守る行動」の第一歩として情報の収集がまず必要だと云うことは前の投稿でも書きました。このことは自然現象でも社会的事象でも同じですが、社会的事象では金融恐慌の場合など、多様な情報収集がより一層重要であることを指摘しておきたいと思います。

最近投資家の間で、ドル建て外国小切手の取り立てが金融機関で煩くなってきていると聞きます。表面上はマネーロンダリングを水際で防ぐためと言われていますが、今まで以上のチェックを行うように金融庁から通達を受けているからだと云う情報もあります。折しも折り米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ決定によって、世界中の中央銀行が一斉に量的金融緩和に逆戻りしているのです。米国では既に50年国債の発行が検討されているのですが、財務長官は100年国債の計画に言及しております。(米国の金利は1.8%~2.0%でさらなる利下げの余地はある)

日本の米国債保有高は中国を抜いて、直近のデーターでは1兆1308億ドルと世界第一位となっているのです。中国は米中貿易摩擦を背景に少しづつ減らしているので、米国の長期債を買わされる対象となるのは日本であることは間違いありません。買わされることはなくても買い替えを要求される可能性がもっと高いのです。

日銀の日本国債保有高は10月20日の日銀毎旬報告によると482兆円で、500兆円に迫りつつあります。金融緩和の出口が見つからず、既にマイナス金利で金利操作の余地は無く、イールドカーブ・コントロールに頼らざるを得ない状況で、政策の振れ幅が一層狭くなっている窮状は明らかです。日銀自体が債務超過に陥る危機さえ懸念されます。

永久国債は一種のヘリコプター・マネーだと云えます。MMTも金融恐慌の心配のない状況であればともかく、金融緩和が行き詰まった現時点での実行は不可能です。社会保障の財源をMMTに求め、更に金融緩和をすすめ消費税廃止やベーシックインカムを公約する左派政党など、ポピュリズムの極致にして無責任で不道徳だと言わざるを得ません。これに騙されるようでは自己防衛は不可能です。

逃げ道を失った日本の金融政策の行き着く先は「金融封鎖」だと警戒する見方が投資家の間で強まっているのもこのような事情からです。いずれにしても無利子の永久国債など民主主義国家では存在しません。強引にやるとしたら共産主義国家になってしまうでしょう。


天才投資家ジョージ・ソロスは「再帰性理論」の中で自然現象と社会的事象の違いを次のように説明しております。

ソロスは世の中に存在する事象を、次の2種類に分類しました。

自然現象:例えば台風がやってくる
社会的事象:金融恐慌がやってくる
「台風がやってくる」という自然現象は、人間の思考とは無関係に存在します。ところが「金融恐慌がやってくる」には人間の思考が介在しその情報は多岐にわたり、その結果は多様で不確実性を伴うのです。それがソロスの云う社会的事象につきまとう「可謬性」です。

社会的事象の中でも政治的問題となりますと更に複雑化し一定の解はないのです。「社会的事象」には、人間の誤解や間違いがもともと入っていると云うのが現実です。

従って社会的事象に関しては「あなたの解」しかないのです。そして「あなたの解」はエゴイズムの塊かもしれません。身を守る行動に絞り込めば同じ解を持つ仲間が増えるでしょう。しかしそのために努力して集めた情報、それを他者と分かち合うことは普遍的で愛に満ちた行為ではないでしょうか。

事実、私はジョージ・ソロスの「再帰性理論」を学べば学ぶほど、彼が単なる金儲けに専念するエゴイストではないと確信したのです。彼の理論はまさに哲学と云って良いレベルです。身を守る考え方を惜しみなく説き、他者に分け与える姿勢はまさに愛に満ちたものです。

ジョージ・ソロスの書籍『ソロスの講義録/資本主義の呪縛を超えて』は、絶版になって手に入りにくいかもしれませんが、図書館や古本だったらあるかもしれません。

「自分を大切に出来なければ、他人を大切にすることも出来ない」と云うのが私の信条です。

時事

マイクログリッド

再生エネルギー、マイクログリッド、大容量蓄電池、電力系統制御などについて個別バラバラに説明してきたのですが、今回の台風19号による広域にわたる甚大な被害をうけて、電気エネルギーの安定供給を災害対策の面から取り組むことの重要性を強く感じました。

災害発生直後のTV討論で自民党政調会長の岸田文雄氏が発言した内容は注目すべきものでした。岸田氏が今回の災害対策として最も重要だと指摘したのは「送電網」と「治水」でした。
この2つは相互に関係し19号台風のもたらした災害対策の主な要素でした。この指摘には司会者はじめ野党の議員もあまり関心を寄せていなかったようですが、おそらくその重要な意味が理解できていなかったのではないでしょうか。

今回は岸田氏の指摘に沿って表記のテーマを紐解きたいと思いました。

送電網については、まず電力系統制御の難しさから解かなければなりません。amazonでこれに関する書籍を検索してみるとなんと大部の本が何10冊も現れ、明らかに専門分野の複雑な理論体系のように見受けられたのです。従ってあまり専門的なことはよくわかりませんが、簡単に云ってしまえば、地域独占の電力会社はなんの事情かわかりませんが、どうしても大規模送電網を維持することが必要なようで、その管理・制御に汲々としているのです。そのデメリットがあまりにも大きいにも拘らずです。地域別の送電・受電のバランスが崩れると周波数の乱れなどが生じ大規模電力網につながる設備や機器に重大な運転上の障害を与えると云うのです。ここで言えることは電力会社が地域独占であり、何らかの意図で大規模電力網を持ち、その維持管理に苦心していること、更にそのことがブラックアウトの遠因をつくっているらしいことなどです。

上記の送電量の調整がどのように行われているかはブラックボックスとなっております。最近新聞紙上で「準備放流」とか「事前放流」の是非について触れられた記事が見受けられますが、これには明確な答えが出ていません。推定でしかものが言えませんが、送電量の調整は揚水発電や火力発電に少なからず依存していることは間違いないでしょう。揚水発電には混合型と単独型があります。混合型は発電目的のダムに揚水機能を持たせたものです。即応性から考えるとこのタイプが容量的にも優れており、即応性と大容量化への立ち上がりの速さで火力発電に優るのは明らかです。従って混合型揚水発電が電力系統制御に多く用いられているものと考えられます。残念ながらその詳細についての報道が一切ないのです。

岸田氏には、もう一歩踏み込んで「送電網」の最大の問題点であるところの「電力系統制御」に触れていただきたかったのです。当然この問題が「治水」にも関係するのですから。

前置きが長くなってしまいましたが、これから大容量蓄電池のはたす役割について述べてみたいと思います。大容量蓄電池は、自然エネルギーの不安定性をカバーするためにも、またマイクログリッド(エネルギーの地産地消)を促進するためにも必須であることは明らかです。その上でこれが防災の主役となる可能性を持っているのです。今までの投稿記事をお読みになった読者の方には、大容量蓄電池が揚水発電に変わる役割を持つことができる可能性をご理解いただけるものと考えます。

ただし、マイクログリッドは局地に同時多発的に普及させる事はできても配電網全体の問題解決には結びつかないことは明らかです。従って当面、電力系統制御を無視するわけにはいきません。「地域独占を肯定するのか」とのご批判を受けるかもしれませんが、マイクログリッドを強力にすすめることを前提条件として「送電網」対策も当面放置できないでしょう。

レドックスフロー電池を推奨してきたのはマイクログリッド推進のために最適だと考えたからでした。「送電網対策」となれば当然、液体水素・NAS電池・リチューム電池の検討も視野に入ってくるのですが、安全面での改良がこれらの蓄電技術で進められているものの、用途を考えると、レドックスフロー電池がマイクログリッド推進に欠かせない存在であることは変わりません。
系統制御を目的とするなら、北海道電力南早来変電所の大型蓄電システム緊急実証事業のレドックスフロー電池プラント導入事例が参考になります(出力15MW,容量60MW/h)。

液体水素は自然エネルギー移送の手段に過ぎず、NAS(ナトリューム硫黄電池)は火災発生以後安全性対策がすすめられているものの負極にナトリュームが使われていることから潜在的問題が残されています。更にリチューム電池は吉野彰氏のノーベル賞受賞で明らかなようにマイナス極に炭素材を使うことで安全性が向上したのは間違いありませんが、現状では依然として小規模(家庭用向け)の生産が主流です。

2019年11月以降、FITで売電をしていた家庭において、固定価格での買取保証期間が終わる家庭がでてきます。その数は2019年だけで約53万件とも言われています。期間終了後に何もしなければ、そのまま大手電力会社に電気を流すだけとなりますので、選択肢として蓄電池を購入するという人もあります。「災害時に活用可能な家庭用蓄電池システム導入促進補助金家庭用蓄電池システム ※太陽光発電設備は補助対象外」がありますがこれも二次公募:2019年10月1日(火)~2019年11月29日(金)12:00(必着)で終了します。補助金なしの場合、容量によって異なりますが、100万円~200万円かかります。一家庭ごとに蓄電池設備を導入するにはコスト的に合わないでしょう。このような現状から、どうしても地域別、企業別、集合住宅ごとに導入し一軒あたりの導入コストを下げることが必要となってきます。

最近私の知人から次のようなアイデアが寄せられました。
避難所が小学校・中学校となっているケースが多いので、避難所ごとにコンテナー型レドックスフロー電池(複数ラインナップ)を設置し、更に集光型太陽光発電(2軸追尾架台&レンズ付きモジュールを備えた高性能太陽光電池、いずれも住友電工横浜製作所製)と組み合わせたら一学校区の3000軒の安定電源を賄うことができるのです。

エネルギーの地産地消=マイクログリッドの普及の出発点としては理想的なアイデアだと思います。設備償却がKWあたり5円程度であり安全性は抜群、繰り返し充放電に強く、寿命も他の蓄電池に比較して群を抜いて優れているなどの特徴があり、地方自治体への提案・協議の上、是非推進したいと考えております。