経済

ニューズウィーク(2019年8月26日)
本誌9/25号(9/19発売)は「リーマンショック10年 危機がまた来る」特集。貿易戦争、新興国リスク、緩和バブル……グローバル経済を直撃した未曽有の危機は再び人類を襲うのか。迫り来る「次」の金融危機の足音。と云う特集を組み、その中で【年表】リーマンショック10年 経済崩壊から再生までに起きたことを詳細にリストアップしています。
<金融危機には「10年サイクル説」があり、そうであれば次なる危機はいつ訪れてもおかしくない。前回の金融危機以降、各国はどんな救済策を取ってきたか。危機発生からの10年を振り返る。>がサブタイトルです。

この年表は、世界の先進国の金融政策が一貫して延命策としての金融緩和を続けてきたことを如実に物語っております。
債券相場は大幅上昇。長期金利は約3年ぶり低水準を更新し、過去最低水準に接近しています。米中貿易摩擦の激化を背景に米長期金利が大幅低下したことも、後で述べる逆イールド発生の原因ではないでしょうか。

こんなニュースが伝わった先週、寺島実郎一氏(般財団法人日本総合研究所会長)から世界経済の実態を示すデーターの紹介がありました。
IMF発表の世界経済の成長率は今年1月が3.5%に対し4月が3.3%、最新値が3.2%、一方日本のGDP予測については、4月の1.0%を最新値0.9%に下方修正しました。
更に12日、BIS(国際決済銀行・スイスのバーゼルにある中央銀行中の中央銀行)発表の世界の債務総額は180兆ドル(1京9千兆円)で2007年比1.6倍、世界のGDPの4倍にも及ぶ急膨張をもたらしました。この天文学的世界債務膨張は、世界の中央銀行が揃って異次元の超金融緩和を行った結果です。株価は30%UPしたが、金融経済と実体経済の乖離が極端に進んだことがその背景にあります。

米国では8月14日に逆イールドが発生したことが報道されました。米10年債の金利が2年債の利回りを下回ったのです。過去50年来、逆イールドが起こると数年後に必ず景気後退が激化することが歴史上証明されているのです。リーマンショックも例外ではなく、金融破綻の1年前の2007年に逆イールドが発生しています。原因としては調達金利が運用金利を上回ると金融機関の経営が成り立たなくなるのです。銀行は資金を貸すことができなくなり、実体経済にダメージを与えるのです

1930年代の世界不況が第2次世界大戦への経済的土壌を作ったと云う見解はよく聞かれることです。その恐怖の過ちを二度と繰り返してはなりません。
貿易赤字国も黒字国も、等しく貿易収支を均衡化する責任を負っているわけですが、米中貿易戦争はこれに逆行する危険な動きと云わなければなりません。

IMFによる「バンコール」「SDR」などは対策として有効なのか今のところは不明です。「リーマンショックの火元は日本」と云う見解があります。歴史を辿れば震源地は日本だったと言えるのではないでしょうか。リーマンショックは2008年9月のことでした。リーマンショックに至る過程では、日本の金融政策は世界初の量的緩和未知の領域に踏み込んでいました。更に日本はアジア通貨危機のとき、世界初のゼロ金利政策を導入していました。その結果ヘッジファンドたちが円キャリートレードに向かったのです。日本の中央銀行は意図的、直接的にカネ余り状態をつくり出しました。これが世界にも溢れ出し、ジャパンマネーはアメリカに殺到しバブルを一層煽ったのでした。

27日のニュースでは、日経平均株価20181円(8ヶ月ぶりの安値)、ドル円為替相場105.2円を報じました。円高・株安が止まりません。前回同様若干の揺り戻しはあるもののトレンドは変わらないでしょう。いずれ為替は円安に急激に反転するかもしれませんが、官製相場が破綻すれば、次の円安は株高を伴わない円安です。
当面は100円の円高に向かって進むでしょう。そして、円高は日本の不況を増幅し金融危機を招くとの投資家スジの予測が多く聞かれます。これは日本の超金融緩和が自ら招いたブーメラン現象です。自作自演とも云えます。いずれ世界の金融危機の責任を取らなくてはならない羽目に陥るのは日本です。

最後に「逆イールドで相場は暴落—あなたの生活に直撃」と云うYoutubeを見つけたので紹介しておきます。わかりやすい解説です。

ピープルパワーTV:逆イールドから始まった経済危機。ドイツ銀行破綻は?中国経済は?リーマンショックを超える危機

https://youtu.be/2du-AmAH_Qw

「バンコール」「SDR」
については機会があれば後日説明をいたします。

経済

「バブル崩壊」とか「経済恐慌」と云えば10年昔から同じことが言われているけど、不景気ではあるがそんな激しい変化が起こったためしがない。「このような悲観論は正にオオカミ少年ではないか?」。

この批判は当たっているのだろうか。誤解を避けるため「経済恐慌」は「金融恐慌」という言葉に置き換えたい。
「バブル崩壊」とか「金融恐慌」はたしかに起きてはいない。だからと云って、歴史的変化はこれとは無縁なんだろうか。

2008年9月のリーマンショック以来、世界の金融政策をみると、ドルの基軸通貨としての地位を守るためアメリカの中央銀行がQE(金融緩和をして通貨発行額を拡大した)を実行し、それに協力する日欧が肩代わりする意味でQEを拡大した。ついには日欧の中銀がマイナス金利の金融政策まで実行するに至った。

一息ついた米中銀(FRB)は利上げをして金融破綻の延命を図った。しかしながら日欧がQEの限界を迎え、長短金利がイールドカーブの逆転をみるに及び、米中銀も金融緩和の再起動を余儀なくされた。

金融恐慌は日米欧の中銀の度重なる緩和政策により延命に延命を続け今日に至っている。これは単なる延命でなく、金融破綻のエネルギーを蓄積した時間稼ぎに過ぎない。

ところで「オオカミ少年」と非難する勢力の意図はどこのあるのだろうか。次の発言に注目しなければならない。「10年間も景気停滞に見舞われ、しかも金融緩和を続けながら経済恐慌も起こらない現状を見れば、もっとお金を増発して財政出動を思い切ってやるべきだ」「円で国債が回っている限り、国債の増発で国が潰れるはずはない」「インフレ率2~3%までは景気刺激策をすすめるべきだ」

以上をもってあえてMMTとは言わない。MMTには金融論(経済理論)と財政政策が混在しているからだ。「オオカミ少年批判」や「お金増発・財政出動」などは政策論であって経済理論とは切り離す必要がある。なぜなら彼らは都合の良いときは経済理論としてのMMTを振りかざし、一方において別の都合では政策論を主張するからだ。MMTの落とし穴にはまらないよう細心の注意を払ってこの文を書いている。
https://nc5.info/2019/07/03/post-572 (MMTについての過去記事)

ところで前置きはさて置き、本論に移らねばならない。

日本経済新聞 電子版 19年8月15日

15日午前の東京株式市場で日経平均株価は一時2万0200円を下回り、前日からの下げ幅は500円に迫る勢いだ。
米国では14日に10年物国債の利回りが2年債を下回る長短金利の逆転が発生。近い将来の米景気後退が意識され、米ダウ工業株30種平均が800ドル安と今年最大の下げ幅を記録した。

米中貿易摩擦の長期化もあって世界景気の減速懸念が強まるなか、日本の株式相場はどう動くのか。中長期的な展望を市場関係者に…
(16日には米日とも若干戻してはいるがトレンドは変わらない)

日刊ゲンダイDigital 19年8月6日(金融ジャーナリストの小林佳樹氏)

「年内に1ドル=100円を切り、株価1万8000円割れが見えてきました。米国は年内に1~2回の追加利下げがありそうで、各国の利下げ合戦が激化します。ただ、マイナス金利まで下げている日銀には利下げの余地は乏しい。為替条項などトランプ大統領の円高圧力が強まる中、露骨な為替介入に見える米国債の大量購入もやりにくい。せいぜいできることは、日銀がETFの年間買い入れ額を6兆円から増額し、株価を多少下支えすることでしょうが、円高・株安の大きな流れは止められない」

東洋経済オンライン 19年8月17日

日本でも実態悪が進んでいる。日本の経済・企業収益の実態も、悪化の一途をたどっている。消費者心理を示す消費者態度指数は、7月分まで急速な悪化傾向にあり、そのまま消費増税に突入する。鉱工業統計の在庫指数は輸出減もあって増加を続け、6月分の生産は大きく反落して2017年1月来の低水準となった。

企業決算については、日本経済新聞の集計によると、集計対象企業の45.7%が8月2日(金)までに発表を終えたが、4~6月期の実績値は経常利益が12.4%減益、純利益が9.6%減益とのことだ。2019年度通年でも企業側は減益を見込んでいる。アナリストの見通し平均値でも、やはりむこう12カ月のEPS前年比は減益予想のまま、下方修正が止まらない(東証1部についてのファクトセット集計値)。
こうした実態悪を踏まえると、9月までに日経平均が1万6000円に向かう、という見通しは、維持すべきだと考える。

以上は日本の経済危機が迫ってきている根拠だが、世界の金融恐慌についても気になる情報が入ってきた。

ブレトンウッズ会議75周年、フランスのルメール財務相の発言

7月17日、米国ワシントンDCの世界銀行で開かれた「ブレトンウッズ会議75周年」の会合に参加したフランスのルメール財務相が「ブレトンウッズ体制は、もう限界にきている。体制を改革して国際金融秩序を立て直さないと、この体制は正統性を失って消えていき、代わりに(中国が主導する)一帯一路・新シルクロードが新たな世界体制になってしまう」と表明した。

今週末からフランスで開かれるG7サミット(主要7カ国首脳会議)で史上初めて「首脳宣言」が作成されない見通しであることが分かりました。議長国であるフランスのマクロン大統領が開催に際しこのような見通しを表明したためです。1975年にサミットが始まって以来、初めて首脳宣言が出されない見通しです。

主な原因は米英の意見と仏独の意見が対立しているためです。イタリアが出席しない可能性もあったので、トランプ大統領はロシアをG7に戻らせるべきだ主張しています。以前から危ぶまれていたG7無力化がいよいよ目先に迫ってきた感があります。G20重視の傾向が強まりこれが世界の金融経済の大変革をもたらす可能性が高くなってきました。

世界恐慌まではまだ時間がありそうだが、今回の金融恐慌は日本初となる可能性が高い。理由は日本が一番QEの出口戦略が遅れていること、並びに日本が最も輸出環境が悪くなっていること、産業の構造改革が遅れていることなどです。「オオカミ少年」の烙印は汚名ではなくなりつつあります。https://nc5.info/2019/07/10/post-579/(金融恐慌についての過去記事)