政治

前回、村上誠一郎衆議院議員について突っ込んだ評価を示すことをお約束しました。
今日は、その著書「断罪」政権の強権支配と霞が関の堕落を撃つ(村上誠一郎氏と古賀茂明氏の対談)
のご紹介と読後感ということになります。

まず、この本は246ページのボリュームですが、その大半は金融経済と財政政策の現状分析(アベノミクスの破綻とその批判)に終始していると言っても過言でありません。

よく読んでいくと、これは当然のことだと理解できます。何故なら安全保障、社会福祉、産業政策、外交などその他の社会の歪の殆どが、もとを質せば金融経済と財政政策にたどり着くからです。
言い換えればアベノミクスの破綻・失政を正しく批判できなければ、改憲も安全保障も格差問題も少子高齢化も教育再生も正しく論ずることは出来ないからです。

野党にこの視点が欠けており、野党議員の多くは殆ど不勉強だということがこの本を読めばよく分かるのです。政権批判の基本的姿勢は村上氏のほうがはるかに優れていると思います。

私は金子勝氏の野党批判(野党議員の多くは自分のことしか考えていない–まさに犯罪的である)について、直ちに立憲民主党に見解を求める質問状を提出したのですが、通り一遍の「参考にさせていただきます」の定型文で自動的に返事が来た以外にまともな答えは2週間経ちますが一切来ておりません。

前置きはこれくらいにして村上氏の発言の要点のみ以下に挙げました。

「私が現在、一番心配しているのは何をおいても財政の危機です。アベノミクスの三本の矢、財政と金融と成長戦略ですが、これらはとっくに頓挫しています。財政も危機的状況の一歩手前で、もはや限界。日銀による国債買上げ、市中に金を流す金融緩和も同様で、これまた限界に来ています。

アメリカのFBRやヨーロッパの中央銀行も金融緩和をやりましたが、彼らには節度がありました。大体GDPの20~25%までしか国債を買わなかったのです。それ以上買うとそれぞれに国の国債の信用を失うからです。しかし日銀はいま、GDPの81.3%まで買い進んでいます。

三番目の成長戦略に至ってはこれと云った中身がなく、実質的にはアベノミクスは頓挫しているのに、なぜ引き続きアクセルを踏もうとしているのか、直ちに方向転換すべきです。日銀総裁は本来通貨の番人であるはずなのに、今やすっかり安倍政権の番人になり下がっている。」

「これは明治時代からのGDPに対する国の借金ですが、これを見ると、戦争の弾が買えなくなるほど国庫が底をついた日露戦争のときでも、GDPの60%強しか借金がなかったのです。

しかるに今は、ご承知のように、国民の金融資産が約1800兆円あって、住宅ローンを引くと1300兆円強です。これに対し、国と地方を合わせた借金がだいたい1300兆でほぼ資産と同じです。

これだけの資料を出してもまだみんながその深刻度がわからないので、もう一つ使っている資料がこれなのです。要するに2025年までに団塊の世代がすべて後期高齢者になるというのがポイントです。2000年時点の医療、年金、介護の費用は78兆円だったのですが、2025年にはその倍、約150兆円になるのです。医療だけでも毎年1兆円ずつ増えているわけですから、どう考えても日本は救われない。リフレ派の人たちが、まだまだ借金ができるという根拠は何なんでしょうか。」

——日銀と政府のバランスシートを足してみれば日銀の国債という資産で日本政府の借金は相殺されるというバランスシート論も論破しています。全般的に、資料は多く用意され、根拠ある展開には感心させられます——

この他、印象に残った発言を列記しておきます。

「私は以前から指摘しているのですが、公務員法の改正によって人事を官邸に持っていった。それで、まともなことを云うと官邸が、自分たちの意に沿わないということでポストから外すので、官僚たちは物言えば唇寒し秋の風になって、それでみんな黙っている。
それと同じことが自民党内にもあるわけです。これはもう小選挙区制になったときから、分かっていたことなんです。小選挙区制になると、公認・比例の順位・政治資金などのすべてが執行部に握られるんです。」

「安全保障の要諦は「敵を減らして味方を増やす」ことです。安倍さんのように敵ばかりを増やしたら、いくら防衛予算を増やしても追いつきません。」

「最近はありがたいことに、私と同じような主張を述べる人がいろいろ出てきて、意を強くしているのですが、その一人が、アメリカの著名投資家のジム・ロジャーズです。ジョージ・ソロスやウオーレン・バフェットと肩を並べる世界的な投資家のの一人ですね。彼がアメリカの投資情報のラジオ番組で今の日本についてこう話しています。”もし私が十歳の日本人ならば—-私は自分自身にAK-47(自動小銃)を購入するか、この国を去る事を選ぶだろう。何故なら彼ら彼女らはこれからの人生で大惨事に見舞われるだろうからだ。” さらに、”将来にツケをまわすような政府を一日も早く退陣させろ” と云っています。やっぱり、もう安倍さんにお引取りを願って、一日も早く方向転換しなければいけません。」
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以上は殆ど「破綻した金融経済をどう立て直すか」に関することですが、これに関連して庶民を潤す成長戦略、憲法改正をめぐる外交と安全保障の誤ちを糾す、日本を危うくするアベ政治の実態、希望は教育の再生にあり、など多岐にわたり論じられております。

読めば読むほど野党の議員さんたちの不勉強が気にかかります。個々の問題については政権批判に努力しておりますが、もぐらたたきに終わっています。基本的な問題、金融経済・財政について殆ど無理解です。結果的に「決定打としてのアベノミクス批判」が出来ないのです。「もっと金を刷って福祉を充実しろ」などという無知ぶり、金子勝先生に「犯罪的」と言われても仕方がありません。

次回は「MMT」を中心にして世界の覇権の激変と世界恐慌の実態について述べたいと考えております。

政治


まずこの投稿の概略をご紹介します。表題のテーマを語るのに最もふさわしい事例をロシアのプーチン大統領の一般教書演説に求めました。次に日本の野党を代表する立憲民主党が、アベノミクスに代わる経済政策の調査会を設置したことについての評価を述べております。

1.プーチン大統領の年次教書演説についての異なる報道を2件

◼ テレビ朝日系(ANN)2月20日の報道

ロシアのプーチン大統領は政策の基本方針を示す年次教書演説を行い、アメリカとその同盟国が最新兵器の標的になる可能性を示して強く牽制(けんせい)しました。

ロシア、プーチン大統領 :「米国側に我々の最新兵器の射程と速度を計算させよう。米国側は計算した後で我が国を脅すかを決めればいい」
プーチン大統領は20日、アメリカが中距離ミサイルをヨーロッパ諸国に配備するならロシアは配備した国とアメリカの双方を最新兵器の標的に据えると警告しました。

◼ AFP通信 2月20日の報道

ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は20日、年次教書演説を行い、早急な国民生活の改善を約束した。

これまでにないほど支持率が下落する中、プーチン大統領は両院議員の前で演説し、「われわれは待てない。この状況を今改善しなければならない」「今年中に(ロシア国民は)良い方向へ変化していると感じるようになる」と述べた。

プーチン大統領はまた、生活水準を向上させるとする一連の政策を発表するとともに、新生児をめぐる新たな恩典と大家族に対する減税といった、低下する出生率への取り組みの強化にも言及。「家族の価値を高めるため、あらゆることをしてきたし今後も行っていく」「家族の収入はもちろん増加する」と話した。

プーチン大統領はさらに、ロシアは人口統計において「厳しい局面」にあるとし、「根本方針は、より多くの子ども、より少ない税金」だと述べた。

◼ この2つの報道の意味するもの

まるで正反対の内容だが、どちらも真実です。昨年のプーチン年次教書演説ではどちらかと云えば、軍事的発言が満載の内容だったのです。大型スクリーンを使用して、新しく開発された超音速巡航ミサイルや、ミサイル搭載可能で沿岸接近可能なリモコン潜水艦など戦力を誇示するものばかりでした。この時期には外交的には、武力によって経済制裁の対抗し、内政面では「強いロシア」を掲げて愛国心を煽る内容でした。

昨年から今年にかけてプーチン大統領の支持率が80%台から60%台に急落し、デモが盛んに行われる状況に変化したことは衆知の事実です。このことこそが、権力がいくら愛国心に訴えても、国民の生活が苦しくなるような経済情勢には勝てない事を如実に表しているのです。

従って、2月20日のテレビ朝日Webの報道は「強いロシア」が年次教書演説の主題のように伝えていますが、むしろAPN通信の報道にこそプーチン大統領が強調したいポイントの多くが含まれているのです。

2.立民 アベノミクスに代わる経済政策 調査会設置し検討へ
2019年2月25日 6時08分 NHKニュースWEB

アベノミクスに代わる経済政策をまとめるため、立憲民主党は新たな調査会を設置し、社会保障や教育などに重点的に投資することで、将来の不安を解消し、消費の拡大につなげる具体策などを検討する方針です。

立憲民主党は、安倍政権の経済政策=アベノミクスに代わる経済政策をまとめるため、新たに「経済政策調査会」を設置し、会長には逢坂政務調査会長が就任しました。

アベノミクスについて、枝野代表は富裕層に恩恵をもたらすもので、格差の拡大を助長しているなどと批判し、中間層を再生させるためのボトムアップ型の経済政策を実現すべきだと主張しています。

これを踏まえ、調査会では保育士や介護職員の給与を引き上げるなど、社会保障や教育などに重点的に投資することで、将来の不安を解消し、消費の拡大につなげる具体策などを検討する方針です。

立憲民主党は夏の参議院選挙の公約にも反映させ、安倍政権に対する対立軸の1つとして打ち出したい考えです。

◼ この報道の意味するもの

旧民主党の失敗の原因はと云えば、しっかりした経済政策が殆ど無く、デフレ経済で国民の生活が苦しい状況を無視して、「財源は?」と云う圧力に負け「福祉充実のためには消費税が必要だ」とし、間違った政策に走ったことが大きな原因でした。

自民党の経済政策の失敗やリーマンショックの後遺症と云うデフレの根本原因に立ち向かう機会を逃し、新自由主義の格差拡大、企業優遇、金持ち優遇、トリクルダウンの欺瞞を許す結果になってしまったのはまことに残念なことでした。

この失敗の反省が野党に欠けていたことに漸く気づいたのか、今回の立憲民主党の経済政策重視の姿勢は歓迎すべきことではないかと考えます。但し、もう一歩突っ込んで、アメリカの民主党で勃興しているバニー・サンダース率いる社会民主主義の動きを研究するべきだと思うのです。

旧社会主義は国家主義的であり、どちらかと云えば民主主義を破壊し格差を拡大する新自由主義に対抗でき得なかったのです。

アメリカ民主党で、バニー・サンダースが推す民主社会主義者・28歳の女性オカシオ・コルデス下院議員は格差解消とともに、脱原発・大気汚染対策などグリーンニューディール政策を提唱し若者たちの支持を集めております。「社会民主主義」は格差の解消と共に、環境問題に取り組む姿勢を鮮明にうちだしています。

一方、アベノミクスは強きを助け弱気をくじく欺瞞に満ちた政策であり、中産階級を弱体化した罪は重いと思います。

歴史的事実を列記すると

2015年9月、自民党総裁選直後、安倍氏はGDP600兆円目標をぶち上げた

同年10月、麻生氏が経済諮問会議で統計改革を提言

2016年3月、高市総務大臣が経済諮問会議で政府統計の維持改善を提言、安倍首相も同意した

同年6月、内閣府はアベノミクス3本の矢に関し「600兆円経済に向けて」を発表、その最後に経済統計改善の項目を記載、山本幸三氏が統計改革の重要性の資料として「政治主導で統計改革を」を経済諮問会議に提出した

「アベノミクス偽装」を浮き彫りにした毎月勤労統計の不正調査問題をめぐって、野党合同ヒアリングなどで重要な指摘を続けてきた明石順平弁護士が、2月26日の衆議院予算委員会の公聴会に公述人として出席しました。
「算出方法の異なるものを比較した伸び率は、端的にいって嘘の数字であると思います」と、統計不正問題を猛批判、 総務省は問題をごまかすために文書を「捏造」したと言いきっております。その上で、統計法60条2号に違反する可能性を指摘しました。※統計法(平成19年法律第53号)

統計不正は56の基幹統計の内23あると言われておりますが、これに増して深刻な問題は、GDP600兆円目標に関する異常値で、国際的にも問題となる異常値です。

明石順平著「アベノミクスによろしく」によれば、2016年12月8日、内閣府はGDPの算出方法を変更し、それに伴い、1994年以降のGDPをすべて改定し発表した。これはGDPの国際規格「2008SNA」対応しての改定とされているが、問題は国際規格「2008SNA」対応に便乗し、「その他」の項目で20017年のGDPは7.5兆円もかさ上げされている点だ。この「その他」は一応明細が書かれてはいるが各項目に「等」が付記されており、不透明さが目立つ。

立憲民主党がアベノミクス批判に基づく経済政策策定に乗り出したことは評価しますが、統計不正を含め、与党の経済政策の矛盾を徹底的に明らかにし、責任を取らせるところまでいくべきで、くれぐれも負の遺産を一方的に背負い込まないよう注意するべきです。

世論調査で「景気と暮らし」が第一位の関心事となっている事に対応し、アベノミクスに代わる信頼に足る景気対策=経済政策(命と生活を重視した経済政策)を提示することが野党に求められる必須有条件ではないでしょうか。更に、根底を支える思想は「社会民主主義」が現状では最強ではないかと信じております。