社会

前の投稿でマイクログリッドとレドックスフロー蓄電池をとりあげましたが、その開発状況と実用化がどの程度進んでいるか、深く関心を抱いておりました。

たまたま、住友電工横浜製作所を見学するチャンスに恵まれましたので、そのご報告を兼ねて今回の投稿をまとめることにいたしました。

住友電工の横浜製作所には、伝送デバイス研究所と光通信研究所が付属しており、耐屈曲性強化光ファイバーやレンズ付き多芯コネクター・100Gbps超光デバイスなど5GやEVにも関連すると思われる先端技術の製品化にも実績をあげていることに感銘を受けました。

経営理念に「技術重視」「人材尊重」や「多様性の尊重」などがあげられていることを見れば、いかに研究開発に重点をおいているか、そしてGAFAのような先端的経営理念を持った、日本では珍しい将来性のある企業だということを伺い知りました。

予備知識としてはレドックスフロー電池しか念頭にありませんでしたが、マイクログリッドに関しても幅広く関連の製品開発をすすめていることを知りました。

同社は、スマート社会実現への取り組みとしてエネルギー・モビリティー・コミュニケーション(iCT)の領域を結合し、新たな社会ニーズであるところの環境・都市インフラ分野への対応を目指しております。

発電ではCPVシステムと称して高い変換効率を持ったレンズ集光素子を持った太陽光発電パネルと、太陽光に向けて自動的に方向を変える追尾システムをすでに製品化しておりました。

送配電では超電導ケーブル・大型インバーター・配電自動化システムの製品化。

蓄電では、レドックスフロー電池、ユーザーレベルでは通信モジュールを含むスマートメーター・デマンドレスポンスなどスマートエネルギー・ソリューションを総合的に取り組んでいました。

蓄発電システムとしてはすでに大規模実証例が次の通りあげられます。
RF電池北海道電力実証(15MW-4h)2015年12月稼働
RF電池サンディエゴ実証(2MW-4h)2017年3月稼働
CPVモロッコ実証(1MW)2016年11月稼働

レドックスフロー電池の特徴
安全:常温で運転可能で、不燃難燃材料で構成しているため火災のリスク極めて低い
長寿命:20年のシステム耐久性を持ち、充放電サイクル数は無制限、電解液は劣化しないため、半永久的に使用可能
大容量:出力と容量を独立して設計できるため大容量化しやすい。複数の用途にワンシステムで対応可能で経済的

集光型太陽光発電の特徴
化合物半導体の発電素子を用いた高い変換効率(既存Siモジュールの2倍)
2軸追尾架台による朝から夕方まで安定した発電
集光レンズを用いた数ミリ角の小型セル、薄型・軽量のモジュール
高温・高日射地域にも強い適応力

横浜スマートシティープロジェクト(YSCP)
経産省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の地域実証に参加、横浜製作所で2012年7月よりYSCPの実証に参加している。
その規模はレドックスフロー電池1MW/5MW、集光型太陽発電システム100KW

住友電工の特色
以上の実証例は同社の技術開発の一部でしかありません。先に「GAFAのような先端的企業」と記しましたが、GAFAより優れた面があるのです。それは同社の先端技術が、日本の得意分野である高度な製造技術に結びついていることです。GAFAがものづくりと結びついたと考えたらよりわかりやすいのではないでしょうか。

特記すべきは、同社が惜しみなく研究開発と設備投資に資金を注ぎ込んでいることです。これは将来の収益向上に資するに違いないでしょう。日本の多くの大企業がひたすら内部留保を溜め込み、拡大再生産の道を閉ざしている姿とは根本的に異なっているのです。

ちょっとひねくれた質問を投げかけました。それは「レドックスフロー電池は大容量蓄電に向いているとお聞きしましたが、逆にどこまで小規模化ができるのでしょうか」と聞いてみました。

答えは明快でした「一般世帯20軒分くらいをまとめて供給するくらいの規模までは可能だ、ただし量産効果が出ないとコスト的には問題がある」
これでレドックスフロー電池の性能の不明点が明らかになったと思ったのです。小型コンテナーサイズのシステムができれば、EVや事業所や集合住宅などで爆発的に普及し、量産効果でコストも大幅に下がるだろうと確信しました。

形ばかりの発送電分離が実施されましたが、大規模配電網の配電線の使用料がまだまだ高価なため、大規模配電網の弊害を打ち破る抜本的な施策が必要です。そこで最後に「系統制約」について付記します。

再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策(資源エネルギー庁の資料より)

再エネ由来の電力が持つ出力変動の大きさも、制約が必要となる要因のひとつとなっていました。再エネ由来の電力を活用していくためには、その変動を調整できる何らかのしくみが必要です。

発電や送電、あるいは変電や配電のために使う電力設備がつながって構成するシステム全体のことを、「電力系統」と呼びます。この系統のなかで重要な問題のひとつが、需要=電力利用量と供給=発電量のバランスをとるということです。

電気は、需給のバランスがくずれてしまうと、周波数に乱れが生じ、発電所の発電機や工場の機器に悪い影響を与え、最悪の場合は大規模停電につながってしまいます。

そのような調整力のひとつとして期待されているのが蓄電池です。たとえば北海道は、風力発電に適した地域であり、これからも大量の風力の導入が見込まれています。ところが、需給バランスの調整力となる火力発電が少なく、このままでは風力発電の出力変動に対応できなくなり、電気の需給バランスが維持できなくなる可能性が大です。

そこで北海道電力は、風力発電事業者には、発電所ごとに蓄電池を設置することなどにより、出力変動を一定の範囲内にしてもらうよう要件を定めました。また、発電所ごとに蓄電池を置くだけでなく、系統側に蓄電池を設置することで、蓄電池の容量を大幅に減らすことが期待できることから、複数の風力発電事業者が系統側蓄電池を共同で設置することで、さらなる導入拡大につなげるための取り組みも始まっています。

結び
「系統制約」問題対策の重要課題は、需給バランスが崩れてしまうと、周波数の乱れが生じ大規模配電網の場合、広域大規模停電などの致命的弊害につながるわけですが、この弊害にいかに立ち向かうかです。「系統制約」問題解決には蓄電池のみならず、配電網のすべての要素にわたる総合的対策が必要となります。

NECなどはAIを用いた対策をすすめています。一方住友電工は、海底ケーブルの損失低減や送配電では超電導ケーブル・大型インバーター・配電自動化システムの製品化などの総合力を持っているのです。系統制約問題の解決を住友電工に期待する理由はここにあります。

次世代のテクノロジーのAIやIoTは高度な製造技術と結びついてはじめて花ひらくことになるに違いありません。「ものつくり日本」が復活するチャンスは必ずあると信じます。ただし政治が反対方向を志向し、いつまでも重厚長大の古い企業を支援し、新しい企業に目を向けないような政策を続ければ、次世代テクノロジーの結実は難しいでしょう。

社会

資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーは2012年7月~13年6月までで304.9万kW分が導入された。
内訳は、太陽光発電が291.3万kWと96%を占め、以下、バイオマス発電(6.8万kW)、風力発電(6.5万kW)、中小水力発電(0.2万kW)、地熱発電(0.1万kW)と続く。また、太陽光発電の認定済み設備容量を加えれば2091万kWとなる。
太陽光発電は日の出とともに発電を開始し、正午でピークを迎える。その後は発電量が低下していくケースが一般的だ。風力発電は「風任せ」で発電量は常に変化する。こうした問題を解決するため、系統安定化に向けて本格導入が検討されているのが大容量2次電池だ。

太陽光・風力はこのように安定性を欠くため、ベースロード電源には原子力発電が必要とされ、当局はこれを基礎としたベストミックスを描いていた。
ところが近年急速に再生可能エネルギー向け大容量2次電池の開発が進み、一部で実用化が進められている状況を見ると、通商産業省主導の原子力発電をベースロード電源とするエネルギー政策は、見直されなければならない。

福島第一原発事故を踏まえ日本は大胆に脱原発にエネルギー政策を切り替えるべきであった。日本の事故を受け、ドイツでは2022年に原発ゼロを目指し、いち早く再生エネルギーへの切り替えを開始し、2018年には40.4% (風力が20.4%、太陽光が8.4%、バイオマスが8.3%、等) を占めるに至った。

北欧や米国では風力発電のコストがKWあたり6円、ドイツの太陽エネルギーのコストは日本の3分の1以下になっており、近い将来KWあたり5円以下になる。太陽パネルの大量生産による設備償却費の激減がこの要因であり、太陽光パネルの需要規模が日本とは比較にならず、量産効果が急速にあらわれた。この結果、ドイツ・北欧では太陽光パネルの価格が飛躍的に安くなっている。

日本は原子力に拘っているうちに、再エネの国際競走争力を失ってしまった。しかしながら失地回復の余地はまだ残っている。カギは「エネルギーの地産地消(マイクログリッド:末尾の注参照)」にある。太陽光発電や風力発電を、広域集中の配電網から解き放ち、地方分権管理への移行を図るべきだ。このためには大容量の蓄電システムが不可欠となる。

再生可能エネルギー向け大容量2次電池として期待されているのが、NAS電池、リチウムイオン電池(LiB)、レドックスフロー電池だ。まずこの三つの電池を比較してみよう。

特徴異なる3つ電池(主要2次電池の性能比較)

■ NAS電池の特徴は、(1)エネルギー密度が高い(鉛電池の約3倍)、(2)電解質が固体のため自己放電がなく、エネルギー効率が高い、(3)長寿命(15年以上)、(4)可動部分がなく保守が容易、(5)完全密閉型で排ガスや騒音が出ないことなどが挙げられる。
しかし、10年2月、11年9月には同電池が原因で火災事故が発生したため安全性が懸念されている。
その後、原因究明と対策に積極的に取り組み、火災事故の原因および延焼防止対策を実施した。そして、危険物保安技術協会を事務局とする第三者委員会の検証により妥当であると評価された。これを受けて12年下半期から受注を開始した。

■ リチュームイオン電池(LiB)は、スマートフォン、携帯機器、民生用機器、非常用電源、電動工具、電動バイク、電気自動車とあらゆる用途に採用されている、我々の生活に最も身近な2次電池だ。小型2次電池の分野では、性能としてはトップクラスではあるが、大型用途での導入が遅れている最大の要因が高い導入コストだ。現状、1kWh10万円程度と言われているが、単純に計算すると1MWhで1億円となってしまう。また安全性についても不安がある

■ レドックスフロー電池は、エネルギー密度は低いものの、サイクル数が1万回以上と圧倒的に高いほか、バナジウム、鉄、クロムなど燃焼性の低い物質を使うため安全性にも優れている。逆にエネルギー密度が低いため小型化には不向きで、もっぱら大型用途が中心となる。国内では住友電気工業(株)(大阪市北浜)が製品化している。

同社は2012年7月から横浜製作所(横浜市栄区)において国内最大規模の集光型太陽光発電装置とレドックスフロー電池を組み合わせた実証実験を開始した。また実用サイズのコンテナ型蓄電池を使った実証実験に入った。(トップの写真)
以上の「主要2次電池の性能比較」は、半導体産業新聞の記事を一部引用させていただいた。

(大容量2次電池の比較は別表参照)
別の情報では、住友電気工業は2019年度にも、電解液にチタン系材料を採用した新型の大型蓄電池「レドックスフロー(RF)電池」を市場投入する。従来の主材料である希少金属のバナジウムを使わず、性能は同等のまま電池コストを現在の2分の1程度に抑えられる。材料やセル構造などの改良を重ねて20年度に1キロワット時当たりのコストで3万円以下を目指し、大型蓄電池で先行するナトリウム硫黄電池(NAS)などと競う。

大型蓄電池は、発電量の変動が大きく送電網に負荷がかかる再生可能エネルギーの貯蔵用などで市場拡大が見込める。国は余剰電力貯蔵用電池の開発を推進し、1キロワット時当たり2万円以下を目指している。ただし、これは再エネのための大容量2次電池とは性能が全く異なり、技術的にもよりハードルが低い。

レドックスフロー電池(RF電池)の特徴はこの電池の構造と電解液の組成からきている。RF電池はセルの中で電解液を循環する方式の蓄電池で、住友電工が業界に先駆けて実用化。蓄電容量の大型化が容易なほか、使用できる期間は他の2次電池と比較して圧倒的に長寿命、更に電解液、セルスタックなどが不燃・難燃材料で安全性が高い。同社は北海道で容量6万キロワット時の世界最大級のRF電池を稼働したほか、米国や台湾でも実証実験を進めている。

現在、横浜製作所で実証実験がすでに終わって、商品化を進められているコンテナー方式は、我々がもっとも注目している設備で、これこそがエネルギーの地産地消を担う基幹設備となる。

電極部(セルスタック)と電解液のタンクが分離され、ポンプでタンクから電解液を必要に応じ送り込む構造となっていることが、大容量で長寿命、しかも安全性が高いと云う特徴を生み出している。(左図参照 )

注:マイクログリッドとは?

電力と言えば、大型発電所で多量に作られたものが送電線によって家庭や職場に供給されているものが殆どです。
ところが、こうした電力供給システムでは長距離の送電を行わなければならず、その際に発生する多くの電力損失や環境への影響が避けられません。また災害などが起これば周波数変動により地域全体が停電になってしまうリスクもあります。そこで近年注目されているのが「マイクログリッド」です。

電力消費者の近くに小規模な発電施設を設置し、分散型電源を利用することで安定的に電力を供給するという仕組みです。これには太陽光・風力発電等に対応した、安定的な大容量2次電池が不可欠です。

尚マイクログリッドとは目的が異なる大容量二次電池には、NECの系統電力品質確保のための、大型蓄電装置やフライホイールを用いた電力の局所一時保存の装置があるが、AI・IoTを応用して発展する可能性があることを付記しておく。